80年代のガイドブックの地図

私はかれこれ20年近く海外旅行ライターをしていますが、その間、携わっていたガイドブックの作り方も大きく変わりました。そのうちのひとつが、ガイドブックに必須の「地図」です。昔は本当にいい地図がありませんでした。たとえば、まだ私が旅行を始めたばかりの80年代は、欧米諸国をのぞくとガイドブックに掲載されている地図は正確とは言いがたく、なかには読者投稿の手描きの地図そのままというものさえありました。とはいえ、当時はそれで旅行できたのですから、まあ何とかなるものです。

ガイドブックの地図の裏話・その1 80〜90年年代のガイドブックの地図はどんなもの? ガイドブックの地図の裏話・その1 80〜90年年代のガイドブックの地図はどんなもの?

90年代に入り少しずつ精度は向上するが…

90年代に入ると、ガイドブックの地図は全体的に向上して行きましたが、それでも発展途上国の地図はまだまだ方位や縮尺などは不正確でした。それには理由がいくつかありますが、ひとつにはガイドブックの取材者や編集者にまだ地図製作の知識やノウハウがなかったこと、そして地図製作の元図となる地図にいいものがなかったことです。当時はある町の地図を作るとすると、取材者は現地の書店や土産物屋を回って、なるべく正確な地図を手に入れていました。それもなければ観光局でくれるような、略図のような地図を元にしていたのです。

正確な元図が手に入らない?

大きな町では多少不正確でも、何とかこうした地図を手に入れることができました。しかし国によっては、大都市でもなかなか正確な地図が手に入りませんでした。たとえばインド。しかしそれでも警察などに行くと、ちゃんと正確な地図がありました。インドネシアでも町の書店で売られている地図は大雑把なものでしたが、役所に行くときちんと測量した地図がありました。多分、これらの国では、軍事的、政治的な理由で正確な地図を発行していなかったのでしょう。中国のチベットの町などの地図がなかったのも、同じような理由です。

地図の公表に制限があった?

90年代までは、国によっては町の写真撮影すら場所によっては厳しいところもありました。インドや旧共産圏では、国境や橋、鉄道はもちろん、バスターミナルもダメで、写真を撮っていて追いかけられたこともありました。私は出国の際、ノートに書いた手描きの地図が見つかって、尋問されたこともあります。そんな時代だったので、正確な地図が出回ったら、それらの国では問題になったのでしょうね。