常に「北が上」とは限らない地図

さて、正確であろうがなかろうが「地図が手に入らない」場合は、取材者が町を歩き、ガイドブックのために適当な地図を作るしかありません。しかし当時、その出来は取材者の力量に大きく関わっていました。コンパスを持ち歩く取材者は少なく、90年代までのガイドブックの地図は、地図の上が常に方位の北とは限りませんでした。さすがに南北逆にすることは少なかったですが、ページレイアウトの都合で、上を北ではなく東にしてしまうことは普通にありました。この「方位が違う」ので困ったのは、全体図から作られた拡大図の方位が、全体図と同じとは限らなかったことです。ページをめくっていくと、同じ道が拡大図になると向きが違ったりと、使う人はかなり混乱していたことだと思います。

ガイドブックの地図の裏話・その2 80〜90年代はどうやって地図を作っていたか ガイドブックの地図の裏話・その2 80〜90年代はどうやって地図を作っていたか

「縮尺」が実際と違う

歩いて地図を作る場合、かかった時間や歩幅で距離を測るのですが、これも地図作りに関してプロの人がするわけではないので、かなりの誤差がでます。町が広い場合は、歩かないで乗り物で移動するということもあり、取材してみたら誤差が2倍以上にもなっているガイドブックもありました。私はアジアのある町で、地図では1kmだったので「歩いて15分か」と歩き始めましたが、いっこうに着きません。結局30分かかり、その距離が2kmあったことを知りました。後で、取材の前任者にその点を問いただした所、乗り物で移動したのでだいたいで縮尺を入れたとのこと。当時は万事がそんな感じだったので、読者も取材者も道に迷いっぱなしでした。が、まあそれでも旅行はできました(笑)

地図作りをイージーに考えていたのかも

私がガイドブックの仕事を始め、地図を作り出した頃はまだそんな調子でした。地図に厳しい人には、地図の「北」が上になっていないとよく注意されたものですが、編集者によっては、無駄なスペースがなくコンパクトに収まるように、レイアウト優先で「北」を自在に変えている人もいました。まあ、そうやって試行錯誤しているガイドブックはまだ良心的なほうで、イージーな出版社は他社のガイドブックの地図をそのままコピーして、「少しだけ変えて」使っているところもありました。地図に著作権はないのも同然でしたし。90年代はずっとそんな調子でした。それが大きく変わるのが、インターネットが普及し、Google Mapが登場した2000年代です。