トラジャの人々の墓は岩の中

インドネシアのスラウェシ島の山間に住むトラジャ族は、キリスト教徒になったいまでも、昔から続く独特の習慣や伝統を守っています。今回はそのお墓とそこに供えられる、ある“もの”についての話です。この地方を行くと、村の中や外れにいくつも横穴が掘られた大きな岩を目にするでしょう。そこに木の扉が付いているのでわかると思います。彼らは基本的には、これらの岩窟墓に葬られるのです。村人の墓は、「王族の墓」と「庶民の墓」に場所が分けられています。立派な扉がある王族の墓のすぐ下に、粗末で壊れかけている扉の墓を見かけたことがありました。それは“昔の奴隷の墓”だといいます。トラジャ族には、厳格な階級があったのです。

死亡した人を象った死者人形“タウタウ”を作り、墓に供えるトラジャ族 死亡した人を象った死者人形“タウタウ”を作り、墓に供えるトラジャ族

死者を象った死者人形「タウタウ」

この岩窟墓は、「魂が天国に昇れるように」という考えから、地上からは手の届かない岸壁の高所に造られることが多いのです。低い場所の穴ならハシゴをかけて登りますが、ハシゴがかからないぐらいほど高い場所にある墓は、崖上から棺桶をつり下げて入れるそうです。さて、トラジャの王族の墓のそばには、木の人形が並んでいる所があります。これは現地で「タウタウ」と呼ばれる“死者人形”。亡くなった人の生前の姿を象った人形を墓のそばに置き、死者を偲んでいるのです。

近くで見ると、かなり“怖い”タウタウ

このタウタウ、頭にターバンを巻き、白装束をまとっているものが多いのですが、近くで見るとかなり“怖い”です。昔のものは造りが稚拙なのか表情がなく、それが怖い(笑) 最近のものは服まで丁寧に彫刻され、顔はかなりリアルに造られて、これもまた怖い。この死者人形が岸壁のテラスにずらり並んでいて有名なのは、「レモ」という村にあるタウタウです。人形が右手を上げて左手を下げているのは、右手から天国の恩恵を受け、左手からそれを地上に流すという意味だそうです。

タウタウを見るなら、レモかパンリへ

レモはトラジャの観光の中心の町ランテパオから10キロほど南へ行った所にあります。村に行くと、タウタウを作っている職人の姿も見られますよ。観光用に小さな木彫りのタウタウを作っている人もいます。写真を持っていって、自分のタウタウを作ってもらうこともできるそうですが…。ランテパオから7キロ北東に行ったパンリという村には、ひとつだけですが変わったタウタウがあります。木ではなく、イスに腰掛けた石像です。このタウタウはものすごく古い訳ではなく、1960年に亡くなったこの村の有力者だと言いますが、いまではすっかり観光名所のひとつになっています。さあ、この死者人形のタウタウ、怖いながらも見てみたくなりませんか?