独特の伝統文化を持つトラジャ族

海洋国家インドネシアのほぼ中央にあるスラウェシ島。アルファベットの「K」の字のような形をしたこの島のちょうど真ん中辺りの高地に、「タナ・トラジャ」という地方があります。さまざまな民族が住み、それぞれ独特の習慣や風習が残っているインドネシアですが、この地に住むトラジャ族はその中でもとくに一風変わった習慣があることで知られています。島を囲む海洋から離れ、標高1000メートル近いこの高地に入っていくと、私たちは不思議な形の家屋を目にするでしょう。それは舟の形をした木造家屋です。

インドネシアの山間にある舟型の家。タナ・トラジャのトンコナンハウスとは?〈前編〉 インドネシアの山間にある舟型の家。タナ・トラジャのトンコナンハウスとは?〈前編〉

山間に舟を模した伝統家屋がある訳は?

「タナ」とはトラジャ語で「土地」の意味。「トラジャ族の地」を意味するこの地にトラジャ族がやって来たのは数百年前。現在の中国の南部辺りから、船に乗ってやって来た人々の子孫と言われています。そのせいか、周辺の他の部族とは異なる独特の文化を持っているのです。「トンコナンハウス」と呼ばれる舟型をした彼らの伝統家屋は、かつてトラジャの人々が海洋民族だった名残なのです。屋根の両端が反り返ったこのトンコナンハウスを遠くから見ると、まるで林や田園に浮かんでいる箱舟のようにも見えます。

トンコナンハウスは住むには不便?

このトンコナンハウスは2種類あり、ひとつは住居、ひとつは穀物貯蔵庫としての役割を果たしていました。一回り小さい穀物貯蔵庫は、住居に向かい合うように建てられています。いずれも高床式になっており、かつてはその下に家畜を飼っていました。ただしいまでは、家畜を一緒に飼うことは衛生的な問題から禁じられているそうです。高床式なのは、ネズミなど穀物を食べてしまう動物が上がってくるのを防ぐためだそうです。しかしこの伝統家屋に人が住むこと自体、現在ではほとんどありません。トンコナンハウスの室内は狭く、窓もほとんど作れないため、現代の家に比べると住みにくいこと甚だしいのです。しかしそれでもトンコナンハウスはなくなりませんでした。〈後編につづく〉