スラウェシ島の高地に住むトラジャ族とは?

インドネシアのスラウェシ島中央部の高地に住むトラジャ族。彼らの住む「タナ・トラジャ」地方は、いまではのどかな農村地帯といった趣で、交通の便も悪くはないですが、かつては行くのが大変で“秘境”と言われたことがあります。地理的な要因だけでなく、周辺の民族とは異なる独特の宗教観や風習も大きかったのでしょう。トラジャ族が住むエリアは大きな都市もない農村地帯だったので、都市を中心に信者を広めていったイスラム教が浸透するのが遅れました。やがてこの地のイスラム化をおそれたオランダ政府により、積極的なキリスト教化が押し進められました。しかしトラジャの人々の多くがキリスト教に改宗していったのは、20世紀半ばを過ぎてからのことです。

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キリスト教に改宗しても、古い伝統は消えない

「インドネシアはかつてオランダ領だったから、キリスト教といえばプロテスタント」と思いがちですが、トラジャにはカソリックの信徒も同じくらいいます。ただどちらにせよ、キリスト教を受け入れてしまったからといって、トラジャの人たちがそれまでの宗教観を捨ててしまった訳ではありません。日本でも昔からの自然や先祖崇拝など独特の宗教観が残っているように、現在のトラジャでも古くからの伝統やアニミズムの宗教観が残っています。その最たるものが「葬式」です。

トラジャ族最大のイベントはお葬式

トラジャの人々にとって、人生最大のイベントが「葬式」です。そのためには何年も前から準備をして、盛大に行うのです。それに比べたら結婚式は簡素なものです。「ちょっと待って。何年もかけて準備するっていうけど、急に死んじゃったらどうするの?」と思う方もいるでしょう。その通りです。お葬式はとてもお金も人手もかかるので、死後何年も、ときには十年以上もたってからすることも多いのです。たとえばある一族で10年の間に何人か亡くなったら、その何人かの葬儀をまとめてします。夫婦であれば、どちらかが先に亡くなった後、残った方が亡くなるまで待ってからお葬式を行うということもふつうだそうです。〈その2につづく〉