どのくらいの数の水牛が生け贄になるの?

では実際に、どのくらいの数の動物が生け贄に捧げられるのでしょうか。これは亡くなった人の知名度や、その財力によってかなり変わるそうです。ただ、金持ちでなくても十数頭の水牛が捧げられるので、何百万円かはかかります。日本の感覚なら一千万円とかそれ以上ですね。だからお金がたまるまで、何年も葬儀ができないのです。また、そこまでお金を出せない人たちは、親戚何人かで合同でお葬式をするそうです。有力者の葬式なら水牛は100頭ほど。そして10年に一度ぐらい行われるという“大物”の葬式では、300頭近い水牛が捧げられるといいます。

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参列者からの水牛のランク付けも

それらの水牛や動物は、葬儀の主催者がすべて用意する訳ではなく、参列者からも届けられます。「どの一家からどのくらいのランクの水牛が送られたか」はきちんとチェックされ、今度はその一家の葬儀が行われる時に同等のお返しをしないと、主催者が恥をかくことになります。別項で、トラジャの伝統家屋のトンコナンハウスの話をしましたが、その家の前には生け贄の水牛の角が柱にいくつも飾られています。これは単なる飾りではなく、昔はその角に「どこどこの一家から送られた」と記し、お返しをする時のために備えていたそうです。何だか、日本の「香典」と考え方は似ていますね。

水牛は“その日”まで大事に育てられる

そのように大事な水牛なので、他の東南アジアに見られるように水牛が農耕に使われることはありません。お葬式に備えて買われていった水牛は、働かされることもなく、のんびりと草を食んでいるのです。トラジャの田園でのびのびとしている水牛たちを見ていると、不幸なのか幸福なのかわからなくなります。

お葬式シーズンは、日本の夏

この、「死者のお供に生け贄が捧げられる」という考えは世界中にあります。聞く所によると、大昔はトラジャでも王が死ぬと奴隷が生け贄にされていたこともあるようです。さすがにキリスト教が入ってからは人が捧げられることはなくなりましたが、住民の多くがキリスト教徒になったいまでも、“生け贄”という風習は続けられているのです。もしこのタナ・トラジャに行こうと考えているなら、6月から9月ぐらいまでが葬式が多いベストシーズンです。現地の観光局やガイドがスケジュールを知っているので、お葬式のある村の場所とその日程を教えてもらっていきましょう。うまくお葬式に出合えるように、日程に余裕を持っていくのがいいですね。