地震の被害に遭ってもたくましく生きる人々を描いた映画

むかし観たイラン映画『そして人生はつづく』の中で、とても印象的なシーンがあります。1990年にイラン北部で大地震が起き、3万人を超える死者が出ます。主人公である映画監督は、かつての映画『友だちのうちはどこ?』の撮影現場であった村の人々がどうなったかを知るため、被災地への旅に出ます。その中で監督は、家が全壊しているのにアンテナを立てている男を見かけます。男は「ワールドカップが始まるんだ」と言います。監督は「こんな状態なのにサッカーを見たいのか」と驚きます。また被災者たちのテント村で、ワールドカップの決勝戦を見ようとする人々の姿も描かれます。当時は私自身がサッカーに興味がなかったこともあり、「ああ、イランの人はそこまでサッカーが好きなんだ」と思ったのです。

天災にあってもサッカーを見たい! ジョグジャカルタでのできごと(前編) 天災にあってもサッカーを見たい! ジョグジャカルタでのできごと(前編)

ジョグジャカルタで起きた大地震

それから十数年後、2006年に中部ジャワのジョグジャカルタ市を大地震が襲いました。この地震は死者3500人という被害をもたらすだけでなく、レンガを積み重ねただけという農村部の家の多くを破壊しました。ジョグジャカルタは、郊外にボロブドゥールとプランバナンという2つの世界遺産がある大観光地です。空港は数日間に渡って閉鎖され、ツアーも安全確保が確認されるまで催行中止になりました。私は当時、毎年のように仕事でジョグジャカルタへ行っていたので、顔なじみのことも心配になり、個人的に行くことを決めました。

地震後に現地へ向かうと、そこでは…

私が着いたのは地震発生から、ちょうど一週間後。断層は市内南部を横切っており、その上にあったゲストハウス街のプラウィロタマン地区は、壊れた家と被害を免れた家で明暗が分かれていました。しかし震源地のバントゥル(市のすぐ外側)では、みな家を失い、もっと悲惨な状況でした。また、誰もが知人のひとりやふたりを亡くして、悲しんでいたのです。おりしもその時はドイツ・ワールドカップが開催される直前でした。村では、天井が崩れて壁だけ残った家にサッカー選手のポスターが貼られていました。そこが自分の部屋だという少年は、「明日からワールドッカップで楽しみにしていたのに」と話してくれました。私はあの映画の一場面を思い出しました。(後編に続く)