かつてジャワで栄えた仏教の名残を伝える

現在はイスラム教徒が国民の9割を占めるインドネシア。なかでもジャワ島はイスラム教徒が多いのですが、イスラム教が広まる以前は、ジャワの住民の多くはヒンドゥー教徒か仏教徒でした。中部ジャワの古都ジョグジャカルタ近郊には、その仏教の繁栄を示す遺跡があります。世界遺産にも登録されている、巨大な仏教遺跡ボロブドゥールです。現在では、バリ島に次ぐ、インドネシア有数の観光地と言っていいでしょう。

インドネシアに残る、世界遺産の仏教遺跡ボロブドゥールの謎 インドネシアに残る、世界遺産の仏教遺跡ボロブドゥールの謎

建造後、密林に1000年も埋もれていた遺跡

この建造物は、中部ジャワを拠点としてインドシナ半島にも勢力を誇ったシャイレンドラ王朝により、8世紀末から9世紀初めにかけて建てられました。日本では奈良時代末期から平安時代初期にかけてのことで、アジア全体に仏教が大きな力を持っていた頃です。ところがボロブドゥール建立後の9世紀半ばからこの王朝は急速に衰退し、同じく中部ジャワに勢力を持つヒンドゥー教の古マタラム王国によって吸収されてしまいます。そのため、この巨大な仏教建造物も、長い歴史の中で忘れ去られてしまいます。再びこの遺跡が姿を現すのは、約1000年後の1814年。当時オランダ領だったジャワを占領したイギリスの知事、ラッフルズによる発掘を待たねばなりませんでした。

何のために造られた建築物なのかが謎

1980年代に日本からの援助も受けて大規模な修復がすみ、1991年には世界遺産にも登録されたこのボロブドゥール遺跡。しかしいまだ謎の多い遺跡でもあります。まず、この建造物は寺院なのか、それとも王の墓や廟なのかもハッキリしていないのです。たとえばアンコールワットや南インドの石造寺院も含め、仏教寺院なら建物の内部には“本堂”とも呼べる内部空間があり、そこに本尊が安置されています。ところがこの遺跡は内部空間が一切なく、自然の丘を石のブロックで積み上げられた回廊が囲み、中心部に向かって高くなっているという、他にあまり類を見ない作りだからです。また、「頂上に王の墓があるのではないか」と調査されましたが、それらしいものはありませんでした。

仏教の教えがわかるテーマパークだった!?

このボロブドゥール遺跡に行ってみてまず驚くのは、その大きさとそびえる高さですが、実際に回廊を回ってみると、びっしりと埋め尽くされた石の浮き彫りの数に圧倒されます。すべて仏教説話に基づいたもので、ストーリーがあるのです。文字がほとんどないのは、当時は文字を読める人は少なく、一般の信者にはこうしたビジュアルのほうが仏教の教えを伝えやすかったのでしょう。ブッダの生涯が描かれた第一回廊から浮き彫りを見ながら回廊を回り、上層に上って行くと仏教の教えが身に付くようになっているのです。だから私は、これは「仏教のテーマパーク」のようなものだったと勝手に推測しています。訪れた人が参拝しながら、頂上に行くに従い、仏教を楽しみながら学べる場所だと。そう思うと当時も今と同じように、ボロブドゥールは人気の観光地だったのかもしれません。