宗教儀礼のバリ島に対し、ジャワではエンタテイメント

もともとワヤン・クリッは、ヒンドゥーの宗教儀礼のひとつとして寺院で演じられたものなのでしょう。だから現在でもヒンドゥー教徒が大半のバリ島では、観光用のワヤン・クリッもありますが、ヒンドゥーの祭礼として演じられるものが正しいようです。しかしここ数百年で住民のほとんどがイスラム教化してしまったジャワ島では、ワヤン・クリッはエンタテイメントとして生きています。オランダ植民地時代も王室が残り、宮廷文化が栄えたジョグジャカルタでは、その間もワヤン・クリッが演じられ、時には王室の保護を受けることもありました。今では演じる人も観る人もたいていイスラム教徒なのです。

ジョグジャカルタのエンターテインメント 伝統的な影絵人形のワヤン・クリッを鑑賞する その2 ジョグジャカルタのエンターテインメント 伝統的な影絵人形のワヤン・クリッを鑑賞する その2

ジョグジャカルタに残るワヤン・クリッの工房

今でもジョグジャカルタの王宮(クラトン)周辺には、ワヤン・クリッを作る工房があり、また市外にはワヤン・クリッ製作で有名な村も細々とですが残っています。ただし今は、ワヤン・クリッ自体がそれほど演じられるわけではないので、ほとんどが観賞用として土産物屋に出回るものなのでしょう。それでも有名作家の作品は、アートとして高い値がつくようです。実際、手の込んだ細工がされて着色されたワヤン・クリッは、芸術品と言ってもいいでしょう。客席からは人形の影しか見えないのになぜ着色するのかは、スクリーンの向こうは色鮮やかな別世界(あの世)、こちら側は現世でモノクロにしか見えないなどといわれています。

現代のワヤン・クリッは短い?

正式なワヤン・クリッの上演時間はとても長いです。私も正確なところはわかりませんが、物語によっては20時間とか(笑) もともと夜通しで、何晩にも渡って行われていたようです。さすがに今はそんなに悠長な時代ではないので、ダイジェストで行われたり、全体の一部が演じられたりすることがほとんどですね。さあ、それではこのワヤン・クリッを観てみましょう。ジョグジャカルタではこのワヤン・クリッが毎日観られる場所は「ソノブドヨ博物館」です。

ジョクジャカルタで毎晩上演されている場所

町の中心、王宮北広場の北側にあるソノブドヨ博物館は、ジャワの伝統文化や芸能に関する博物館です。ここのホールでは、毎晩20時から22時頃までワヤン・クリッが上演されます。料金は200円ほど。ガムラン演奏者の数も十数人と多く、歌い手も入り、贅沢な感じです。イスに座って鑑賞するだけでなく、途中で立ち上がってスクリーンの裏手に行き、演じているダランの姿も見ることができます(写真撮影可)。入場時に英語のパンフレットをくれるので、そこに「本日の演目」のストーリーが書かれているので、何となく手がかりになるでしょう。しかしたいてい「第22幕」とか、大きなストーリーの一部のエピソードですが…(笑)。