写真で見ていた美しい仏様のご尊顔やいかに?

「慶州、韓国仏教美術の傑作『石窟庵』。山奥の世界遺産へ行ってみよう」前編からの続きです。石窟庵の内部は撮影禁止です。ガイドブックなどで見た釈迦如来像の写真を思い出しながら、「せめて石窟の様子を記憶にとどめたい」と気がはやります。しかし、見学の順番を待っていよいよ本尊のある「主室」の手前にある「前室」へ入ると……、あれれ? 想像していたよりも、内部がよく見えません。

一柱門は、ここから仏の世界に入っていくことを示しています 一柱門は、ここから仏の世界に入っていくことを示しています

死角が多すぎる、ドーム型の主室

四角い形の前室の奥に扉道(ひどう=通路)があり、その奥にドーム型の主室があります。扉道の前にガラスがはめられていて、見学者は前室からガラス越しに、扉道とその奥の主室を見るのです。これには大変もどかしい思いをしました。薄暗いのは仕方ないとしても、せめてもう少し、近くに寄って拝顔したいものです。韓国のみならず、世界的にも有数の仏教美術作品といえる、釈迦如来像。そしてその周りを取り囲む、十一面観世音菩薩像、十大弟子像、菩薩像、天部像、四天王像、仁王像といった仏教彫刻が、あるのですが……。

右手奥のこんもりした部分が石窟 右手奥のこんもりした部分が石窟

完全崩壊は免れたものの、矛盾の多い姿に

これらは、写真で見るとため息が出るほどに優美な曲線で彫られた像ばかりです。しかし、ドーム型の内部を正面からガラス越しにしか見ることができないため、どうがんばっても見えない角度が生じてしまうのです。この石窟が最初に作られた新羅時代には、切り出した石を組み合わせただけで、内部の湿気を外へ逃がせる仕組みができていたそうです。当時の新羅人はきわめて高度な建築技術を持っていたのですね。ところが、日本統治時代にここの修復工事を行なった際には石組みを無視してセメントで塞いでしまったため、湿気がたまって仏像が傷んでしまうという矛盾した修復となってしまいました。

切り出された石はここに置かれていました 切り出された石はここに置かれていました

一方向からしか見えない世界遺産では、悲しすぎます

現在はさらに補修を重ねて、強制的に換気するシステムが採用されています。そして現在に至るまで、見学者はガラス越しの観覧を余儀なくされたままなのです。せっかく登山の苦労を経てここまで来ても、これでは“神秘的な仏教遺跡”という期待がちょっと損なわれてしまっています。石窟庵の美術的な価値は世界的にも有名ですから、今後、内外の要望を受けて、さらなる改善がなされるかもしれませんね。

慶州市が出している日本語パンフレット 慶州市が出している日本語パンフレット

敷地の階段に並んだ石にも注目

石窟へと登っていく階段の脇には、さまざまな形をした石が置かれています。これらの石は、石窟庵の建築用資材だったものです。1000年以上、石窟庵を形作ってきたこれらの石材は、修復工事の際にどこへ組まれていたものかが分からずじまいとなり、余ってしまったパズルのピースのようなものなのです。ここがボロボロに崩れた状態で日本統治時代に発見されたとき、設計図などはまったく残っていませんでした。行き場を失った石材の一群は、今はただ静かに並べられているばかりです。いつか、この石材がそれぞれぴったりとはまって、自然の換気システムが復活し、見学者がガラス越しではなく石窟庵の仏教美術を堪能できる日が訪れることを、願わずにはいられません。

さて、帰り道はバス、それともまた徒歩? (私は往復徒歩でした) さて、帰り道はバス、それともまた徒歩? (私は往復徒歩でした)