景福宮周辺、飲食店はたくさんありましたが……

「はじめてのソウル、鍋料理編 その1」からの続きです。テナガダコの鍋「ヨンポタン」で、私はすっかり韓国鍋料理のファンになりました。翌日は、ソウルの宮殿の中でも最大規模を誇る「景福宮」の観光と併せて、景福宮の光化門付近にある食堂に入ってみました。観光客も地元の人も入りやすそうな、安食堂が軒を連ねている一画があり、どこも似たような雰囲気。その中の名前もわからない一店に入りました。

グツグツ、強烈に熱い一人用の鍋 グツグツ、強烈に熱い一人用の鍋

「プデチゲ」が何かを知らずに注文

入ってみると、一人用の鍋を黙々と食べているお客さんが数名。韓国料理はみんなで食べるものが多いので、一人では入りにくいお店も多いですが、ここなら気楽です。私も一人鍋にしようと思い、「プデチゲ」を選びました。「プデチゲ」という鍋がどういうものか知らずに、かわいい言葉の響きだけでなんとなく選んだのです。ここはほとんどおばさん一人で切り盛りしているようで、注文してもビールも鍋もなかなか運ばれてきません。

景福宮の中に庶民的な食堂はありません 景福宮の中に庶民的な食堂はありません

キムチチゲと、似て非なる鍋

待つことしばし、やっと来た一人用鍋は、ぐつぐつと音を立てて煮えたっています。期待してスープを一口すすってみると、「……思ってた味と違う?」。これまで食べて感動してきた韓国料理とは、なにかが決定的に異なっていました。プデチゲ初体験の私は、具材を食べてみてやっとわかりました。ねぎや白菜、えのきなどの野菜類の他に入っているのは、ソーセージ。ハム。インスタントラーメン。缶詰のランチョンミート。これら加工食品がどっさり。ジャンク風味こそが身上の鍋だったのですね。

韓国料理の身上は伝統的な発酵食品

韓国料理のおいしさは、伝統的な発酵食品に支えられていると思います。発酵食品の持つ、奥深く複雑な味わいは、おいしさだけでなく、健康のためにも理にかなうものです。プデチゲのジャンクな味は、その伝統的な味の鍋とは別物でした。私は加工食品があまり好きではないので、せっかくのキムチ味のスープに加工品の味が溶け出していることが、少し残念でした。

若者に人気があるというのも納得

しかし、これはこれで一つの確立した「韓国料理」ともいえます。「プデ(部隊)チゲ(鍋)」、つまり軍隊で食べられていたという、ある意味で伝統ある鍋料理です。米軍からの物資が融通されて、キムチ鍋にそれらの具材をなんでも投入して食べたのが始まりといわれています。加工食品に慣れた現代人には、受け入れられやすい味ですね。ひょっとすると私も、韓国旅行が長くなってジャンクな味が恋しくなった頃に食べたら、もっと「おいしい!」と感じたかも? そんな魔性の魅力がある鍋が「プデチゲ」なのです。(「その3 参鶏湯」に続く)