韓国では直箸がマナー?

韓国への出張から帰ってきた友人の男性が、こう言いました。「韓国の人は、食事をすると直箸でなんでも食べる。一つの鍋をみんなでつついたり。まさに『同じ釜の飯を食う』という感覚で、仕事先の相手でも、これで親しくなったと感じられるんだ」。日本では、家族でもない人と直箸でものを食べるのは失礼と考える人も多いのですが、韓国では逆なんですね。「取り箸を使ったり、日本人がよくやる、自分の箸をひっくり返して使うやつ、ああいうのはよそよそしいからダメなんだ。情に厚い韓国の良さを感じて、いいなあと思ったよ」。

他人との食事。その国での考え方を知れば、もっと楽しく旅ができます 他人との食事。その国での考え方を知れば、もっと楽しく旅ができます

直箸を親しみの表現と捉えられれば、韓国上級者

彼はそう言って、箸やスプーンを一つの鍋に直接突っ込む習慣を、とても好意的に捉えていました。私は韓国に行ったことがないのでその話を興味深く聞きましたが、あとで調べると、これは韓国旅行をした多くの人が驚くことのようです。感想を見ると、嫌だと感じる人と、日本よりもかえって楽だと感じる人に分かれていました。後者の場合は問題ないですが、前者タイプの人は、ある程度は柔軟に対応する方が、楽に旅ができそうです。

一方、インドやネパールでは……

宗教に基づく身分制度が厳しいインドやネパールでは、人が直接口をつけたものは穢れていると考えます。この辺りでの「浄・不浄」の観念は徹底しており、穢れたもののことをインドでは「ジューター」、ネパールでは「ジュトー」といって避けられます。たとえば水の入ったボトルなどから飲むときは、口を触れないようにして飲みます。ヒンドゥー教の生まれた土地は暑さが厳しく、感染力の高い病気の蔓延に苦しんできたことから、宗教の発達とともに、衛生学的にも、このような考えが発達したものと考えられています。

その行為は、ジューター、ジュトーに当たるのかも

穢れの考えが厳しいこれらの国では、日本以上に「口をつけること」には気をつけなければいけません。たとえば回し飲みや、「ひとくち味見させて」と人の食べ物を分けてもらおうとしたり、「これおいしいよ。食べてみる?」と、自分の食べかけているものを渡すなどです。日本で親しい間柄だとついやっているようなことにも注意しましょう。

多様な考え方を知り、認めることが旅をすること

韓国型とインド・ネパール型、正反対に見える食事のルールですが、どちらが正解とは決めきれないと私は思います。世界は広くて、同じ人間でもこんなにちがう考え方があると知る…。そのことそのものが、旅をする意味ではないでしょうか。どんな国へ行っても、ある程度の『郷に入っては郷に従え』、つまり適応力は必要となります。日本でいつもやっていることを押し通すのも一つの旅の形ですが、できるだけその国の人に寄り添うような旅行ができたら、さらに深くその国をわかるきっかけになる、そう思いませんか?