拷問の様子は以前よりマイルドに

「ソウルの西大門刑務所歴史館」の続きです。2階の「民族抵抗室」と、地下の「拷問体験室」は、とくに来館者が熱心に見学しているコーナーです。日本の圧政に抵抗して自主独立をめざした運動家たちが捕らえられ、拷問されたことが、豊富な写真と実物の器具などから知ることができます。しかし、以前は展示されていた、目を覆うほど凄まじい拷問シーンの人形は、2010年の改修を機に撤去されたそうです。私も正直に言って「予想していたより、はるかにマイルドな展示だ」と感じました。

5000人の収監者に見つめられる空間へ

民族抵抗室の一角を占める、「追慕空間」と呼ばれる部屋があります。ここは、部屋の壁じゅうにびっしりと、この刑務所に収監されていた独立運動家の顔写真が貼られているのです。その数は約5000人分ですが、それでも全体数の八分の一に過ぎないそうです。入室すると、まずその“量”に圧倒されます。やがて、そこに写されたひとりひとりの顔を見ていると、その運命に思いが及びます。意志の強そうな若者もいれば、はかなげな若い女性、まだ幼さの残る少年もいます。ちょうど見学に訪れていた小・中学生の団体は、自分たちと年の近そうな収監者の写真を見つけると見入っていました。

子供たちがとりわけ熱心に見ていた部屋 子供たちがとりわけ熱心に見ていた部屋

歴史の現場を歩く

この他にも、実物の獄舎や、死刑場、収監者を運動させる迷路のような隔壁場などが残っています。展示室と屋外展示をすべてじっくり見て回ると、3時間以上はかかります。私が見学した日は天気のいい日曜日で、小・中学生の団体の他、散歩やピクニックのような雰囲気の家族連れやカップルも、屋外展示の間をのんびりと歩いていました。その表情には、日本へのリアルな恨みはまるで浮かんでいないように見えました。春の休日を楽しむ、ごく日常的な風景としか映りませんでした。

忘れられない表情をしていました 忘れられない表情をしていました

グルメやショッピングだけでない体験を

この刑務所歴史館で、私の印象に最も強く残ったのは、“展示されているもの(こと)”ではなく、“展示されなくなったもの(こと)”でした。日本人による、韓国人運動家への非道な拷問などの展示数が、以前よりずっと減らされたということ。このこと自体に、日本と韓国の明るい未来を感じます。当時の日本人による拷問は事実でしょう。しかし、それをいつまでも生々しく再現しつづけるような時代でもなくなってきた、という現実を韓国政府が理解してくれているのだと思います。それでも、建物や拷問具などは本物。実物ならではの、胸に訴えかける力があります。ぜひ見学してみてください!

広々として気持ちのいい公園です 広々として気持ちのいい公園です