汝矣島を観光で訪れる旅行者は少なそうですが、ここはすごい!

「地下の秘密施設」と聞いて、ワクワクしない人はいないでしょう。しかもそれが“ソウルのマンハッタン”と呼ばれる汝矣島(ヨイド)にあるとしたら? 2005年に発見された「汝矣島地下秘密バンカー」が2017年10月から美術館として生まれ変わり、一般公開されました。アクセスは、地下鉄9号線「汝矣島」駅3番出口から徒歩6分。汝矣島国際金融センター(IFC)のそばにあるバス乗り換えセンターを目指してください。2番乗降場前に、ガラスで囲われた地下への階段が見えてきますよ。

これが地下へ降りる入り口 これが地下へ降りる入り口

いまだに謎に包まれた地下施設

2005年にバス乗り換えセンター建設工事の途中で偶然に発見されたのが、この地下秘密バンカーです。バンカーとは、銃撃や爆撃を避けるために地下などに作られる施設のこと。当時の資料が残っていないことから、誰がなんの目的のために作った施設なのか分からず、発見から10年も放置されていました。2015年から徐々に公開され始め、同時にここをソウル市立美術館(SeMA)が運営する複合美術館として整備されました。バンカー建設の目的はいまだに特定されていませんが、「1970年代に朴正煕(パク・チョンヒ)大統領の警護用施設として作られた」という説が最有力です。

発見当時の写真が飾ってありました 発見当時の写真が飾ってありました

ソウル市立美術館の分館として使われている大きな部屋

地下の部屋はふたつに分かれており、ひとつは160坪ある大きな空間。別室は20坪の小さい部屋になっています。大きな部屋は現代アートの展示をしていました。私が訪れたときには、日本人作家の作品も展示されていましたよ。広いけれども窓のない閉鎖的な空間は、アートに気持ちが集中できてなかなかいいものです。しかし、それ以上に、きっちり貼られた壁や床のタイルに囲まれていると、軍事的緊張の時代の息苦しさに少しだけ触れた気持ちになってきます。

このときの展覧会自体も興味深いものでした このときの展覧会自体も興味深いものでした

小さい部屋までたどり着くと、徐々に厳粛な気分に

大きい部屋がアートの展示スペースになっているのに対し、小さい部屋は、この地下バンカーの歴史を物語るギャラリーになっています。朴大統領の映像が流れる部屋の壁には、バンカー発見当時の写真が並んでいます。トイレや洗面台、そしてソファセットの展示には生々しいインパクトを受けました。有事の際にはここに避難することを計画していた真剣味が、それらの遺物から伝わってきます。しかし朴大統領はこの部屋を使うことなく暗殺されてしまいます。

当時のままに保存されています 当時のままに保存されています

秘密基地好き、建築好き、アート好き、みなさんお越しください

若き日の朴大統領や、娘の朴槿恵元大統領の映っているエンドレスの映像をじっと見つめていると、心が激動の70年代に向かっていきます。この地下空間を韓国現代史のひとつの記憶として残し、アートスペースというまったく別の形でよみがえらせたソウル市の手腕は、さすがとしか言いようがありません。このバンカーを覆うコンクリートは、きわめて強度が高く緻密に作られているそうです。建築学的にも興味の尽きない地下秘密バンカー、ソウル観光の合間に一度は訪れたい場所だと思いますよ!

歴史を知るフィルムには長らく見入ってしまいました 歴史を知るフィルムには長らく見入ってしまいました