マレーシアのイポーには、その昔から食通がこっそり通った

マレーシア北部に位置する第3の都市、イポーは、首都クアラルンプールから、バスや鉄道で約3時間のところにあります。世界遺産の観光地ペナンからも同様に3時間。クアラルンプールとペナンの行き帰りに、小休止がてら立ち寄ってみたくなる位置ですね。この町は19世紀半ばに錫鉱山が開発されてから、一時は世界最大の錫の産出量を誇るまでになりました。その間、働き手として、中国南部や英領インドから人が集められたのです。イポーの鉄道駅は、ムーア風、コロニアル風の建築様式を取り入れたもので、瀟洒な造りとなっており、錫産業が盛んだった往時を忍ばせます。2011年公開の某映画のロケ地にもなりました。ただ、そんな程度で、この町に、とくに観光的な見所があるわけではありません。しかしその昔から、食いしん坊にはよく知られた町だったのです。

マレーシアの食の殿堂、イポーは何がうまいのか? マレーシアの食の殿堂、イポーは何がうまいのか?

イポーのうまいものとは?

食いしん坊の旅行者たちはこう言っていました。「マレーシアでは、イポーが一番うまいですね」。「そうだろう? だからわしらもクアラルンプールからわざわざ来るんだ」。イポーのレストランで、マレー人のお客とこんな会話になったこともあります。いったい何がうまいのでしょうか? 「水がうまい」とは、よく言われることです。水がうまいので、麺類がうまい。確かに小麦や米粉と水を合わせて、麺類は作りますからね。最近は、モヤシがうまいと言われていますが、昔は話題にもなりませんでした。「地鶏がうまい」。これは誰もがうなずき合ったものです。イポーはチキン料理がとにかくうまいのです。代表格が名店『老黄芽菜鷄沙河粉』でしょう。蒸し鶏とシャッキシャキのモヤシが別々に出てきます。沙河粉というのは、米粉麺。きしめんのようなあっさり味のスープ麺です。たいがいこの3品をセットで食べます。いずれも極上の味です。

チキンのほかには何がうまいのか

『Aun Kheng Lim Salted Chicken』も有名ですね。持ち帰りの塩釜焼の蒸し鶏です。「アヤムゴリン(フライドチキン)」は、どこでもうまいですし、手羽の唐揚げもうまい。そして『老黄芽菜鷄沙河粉』の蒸し鶏やモヤシの味付けに使われている真っ黒な醤油。ここにイポーのもうひとつの魅力、「広東料理のうまみ」が加わっているのです。真っ黒な醤油は広東醤油の老油といわれるもので、カラメルが入っているのです。この醤油を、ちょっとした香りづけや色付けに使っているのです。日本の九州あたりの甘口醤油の元祖です。アヤムゴリンも、ですからこの醤油で下味をつけたりするのです。そうして広東料理といえば、デザートは「豆腐花」。甘いシロップを掛けた温かい豆腐です。口の中がさっぱりしますね。それとエッグタルト。イポー名物のこのデザートも、実は広東料理なのでした。