開花まで長い月日を必要とする花

キャベツにそっくりな形のつぼみでさえ、ふつうの花のつぼみに感じるかわいらしさよりも、“エイリアン”の卵みたいなふてぶてしさを覚えます。しかし味はいいようで(キャベツに似ているから?)、このつぼみのうちにリスなどに食い荒らされてしまい、開花までこぎつけることが非常に難しいとのことです。開花までに1年から3年もかかり、開花すると数日で腐っていくというラフレシアは、栽培も不可能なので(ここのようにつぼみの保護はできますが)、咲いているラフレシアを見るのは幸運なのです。私のすぐあとに、バスでツアー客が押し寄せていました。

世界最大の花「ラフレシア」を見に熱帯の森へ(その3) 世界最大の花「ラフレシア」を見に熱帯の森へ(その3)

ラフレシアと同じ道を歩んだ動物とは

花は人のために咲いているわけではないけれど、人は花に引き寄せられます。私には、ラフレシアはこの熱帯雨林を象徴する存在に思えました。“花”の概念をすべて否定するような奇怪な容貌、謎の多い生態、しかしそれは、この花が熱帯雨林で生き延びるために選んだ進化の形でした。そして、ボルネオ島に棲息する絶滅危惧種のテングザルも、同じ進化の道を選んでいたのでした。

ラフレシアとテングザル、二つの叡智の結晶にまた感動

植物と動物、ボルネオの熱帯雨林で、環境に適応した形の頂点をふたつ、目にすることができました。それは万人が「かわいい」とか「きれい」とか感じる形ではなくとも、私にはきわめて感動的な孤高の姿に映りました。彼らの、生きるためのシビアな知恵に比べたら、人間などどの人種であってもほとんど見分けがつかないほど同じではないでしょうか?

ラフレシアガーデンの子供の顔を見てしみじみ……

このラフレシアガーデンで道案内をしてくれた少年は、「ルソン族」だと言っていました。マレー系の丸っこい顔立ちとちがって、やや色白で、中国系に近い顔立ちです。けれど、テングザルやラフレシアの極端さを考えたら、私とほぼ同じ顔。今のこの子からすれば、ラフレシアは自分の土地に観光客がお金を落としてくれる幸運の花なのでしょう。彼が大人になったとき、自分の身の回りの自然がいかに特徴的で貴重なものであるのか、気づくか気づかないままなのかはわかりません。「大きくなるまで、しっかりとラフレシアのつぼみを守ってあげて。」観光客の一人である私は、彼にそう言うしかありませんでした。

日本語ガイドを雇って、ますます熱帯雨林が好きになりました

ラフレシアの名前は、シンガポールを植民地として建設したラッフルズ卿の名前に由来しています。その姿の恐ろしさから、調査隊のメンバーは人食い植物と勘違いしたそうです。ラッフルズは自ら手を伸ばして無害を証明したと言われています。やはり日本語ガイドがいるのといないのとでは、このような知識も、貴重な動植物の住む森への愛着も段違いになるものです。現地ツアーはいろいろな会社があるので、評判のいいところを探してみてください。