知識があれば、森の暮らしも夢じゃない?

キナバル公園内を先に立って歩きながら、ガイドさんは「この実は食べることができます」「この木の枝を切ると水が出てきて、飲めるのですよ」など、休みなく教えてくれます。「すごい!もし、森についての知識を持っていれば、森の中だけで生きていけるのね。」と、すっかり感心した私は叫びました。ガイドさんは「そうですよ。森にはなんでもそろっています。なにも知らなければ人間はすぐに死んでしまうけれど、ちゃんと森のことをわかっていれば、いくらでも生きていられますよ!」と胸を張るのでした。

「森にはなんでも揃っています」キナバル公園のガイドさんが胸を張る世界遺産の森を散策!(その2) 「森にはなんでも揃っています」キナバル公園のガイドさんが胸を張る世界遺産の森を散策!(その2)

ポーリン温泉への道中、また新しいホテルが

「そうですね、おまけに温泉もあるしね!」そう、このキナバル公園には「ポーリン温泉」という、よく整備された温泉もあるのです。ビジターセンターのある公園本部から、ツアーの専用車で向かいます。日本語堪能な運転手さんは、途中の道沿いに広がる空き地を示しながら「ここは日本の資本で、豪華なリゾートホテルが建つらしいですよ」と教えてくれました。「ホテルが建てば、日本からのお客さんも増えるし、(日本語が上手な)私の仕事も増えるとは思いますけど……せっかく自然がいっぱいのところなのに、それがここのよさなのに、これ以上ホテルとかはいらないのになあ……このままでいいのになあ……と、私は思うんですよね。」

開発と観光の矛盾、しばし物思いにふける

本音なのかどうかはわかりませんが、若い運転手さんはそう話していました。雇用を生むのは現地にとっていいことですが、環境破壊を心配するのもわかります。自然が最大の売り物なのにそれが壊れてしまっては本末転倒です。このツアー会社では、きっとそこまでがつがつ仕事を求めなくても、十分に収入があるのでしょう。日本資本のホテルというのが気になりました。

イメージとちがう温泉にちょっとたじたじ

さて到着したポーリン温泉は、太平洋戦争中に日本軍が掘り当てた温泉です。そう聞くと温泉好きな日本人泣かせのエピソードですが、行ってみるとイメージの違いにとまどうかもしれません。水着はおろか、ふつうの衣服を着たままの人々が芋洗いの状態で入っています。きれいにつくられた設備ではありますが、これではまったく衛生的ではありません。「まだ時間がありますけど、温泉に入りたいですか。」と尋ねられ、「いやーいいですよ。」と答えると、ガイドさんは「ふふふ、日本人はたいていこの様子を見ると『いいですいいです』と、入ることを遠慮しますね。」と意地悪を言うのでした(しかし、もしもこの森の中だけで生活するのだとしたら、たしかにこれ以上の幸せな条件はないことでしょうね)。(その3へ続く)