昔から地元風の朝食はロティだった

「その店に坐って私は、毎朝、芭蕉(ピーサン)二本と、ざらめ砂糖と牛酪(バタ)をぬったロッテ(麺麭)一片、珈琲一杯の簡単な朝の食事をとることにきめていた。」(金子光晴『マレー蘭印紀行』中公文庫) 漂泊の詩人・金子光晴が、長崎から上海行きの船に乗り、ヨーロッパに向かう途中でマレー半島とインドネシアを旅したのは、1929(昭和4)年のことでした。引用は、マレーシアのバトパハ(ジョホール州)での一節です。

地元の人気メニュー シンプルにしておいしいロティを探せ 地元の人気メニュー シンプルにしておいしいロティを探せ

「ロティ」とはインド風パンケーキ

「ロティ」はサンスクリット語が起源で、インドではパンの総称だそうです。マレーシアでもパン類を「ロティ」とよびます。ところで、多民族が混じり合うマレーシアで、インド系のお店で食べられるロティは、ひと味違います。小麦粉でつくった生地を発酵させて、薄く伸ばして円盤状に焼いた、パンケーキのようなものです。マレーシアやシンガポールではたいへん好まれ、卵やバナナを焼きこんだり、カレーと一緒に供されたりします。

ロティを食べるならインド系のお店で

ロティを食べられるのは、インド系の人がやっていて、大きな円形の鉄板があるお店です。注文を受けると、華麗な手つきで生地を伸ばして焼いてくれます。イタリアン・レストランでピザ職人がするような動作を思い浮かべていただければ、それに近いのではないかと思います。薄く伸ばした生地をクレープのように折りたたんで焼いたらできあがり。表面はぱりぱりとしていて、中はちょうどクロワッサンやデニッシュのように層になっています。

おいしいお店を探すなら

お客が少なかったり、ロティ職人が休憩で席を外していると、鉄板の火は止められます。そういうときには、あらかじめ焼いてあるものが出てきたりしますが、せっかく食べるなら、ぜひ焼き立てのものを。ロティは油を使って焼くので、冷めると固くなって本来の食感がありません。また、安価なマーガリンを使うお店もありますが、「ギー」というインドの発酵バターを使うお店がおすすめ。ギーは、バターを発酵させて煮詰めたものから沈殿物を除いた、いわば純粋な乳脂肪です。手間がかかる分値段もしますが、香り高く、風味がまったく違います。

指先でも味わう食べ方

ロティは通常、くぼみのあるステンレス製のお皿にカレーを添えて供されます。ナイフとフォークを出してくれるお店もありますが、もし抵抗がなければ手で食べてみませんか。生地の感触を指先に感じながら食べることができます。食堂にはたいてい小さな洗面台があるので手を洗うのには困りません。焼き立てロティは熱々なので、やけどにだけはご注意ください。おいしいロティを召しあがれ。