イスラム世界のなかのマレーシア

マレーシアは、総人口2995万人の約6割がムスリム(イスラムを信仰する人びと)で、イスラムが国教と位置づけられています。他の信仰の自由も認められていますが、過半数を占めるマレー系がムスリムであることから、世界最大のムスリム人口を擁するインドネシアや中東との関係も深く、このイスラム美術館は「世界的にみても、優れたイスラム美術のコレクションを所蔵している美術館」と英語圏で人気のあるガイドブック『ロンリー・プラネット』でも評されています。

イスラム世界の美術と歴史を知る マレーシアのイスラム美術館(前篇) イスラム世界の美術と歴史を知る マレーシアのイスラム美術館(前篇)

イスラム美術とは

イスラムでは、聖典とされるクルアーン(コーラン)が彫像などのシンボルを崇拝することを厳しく戒めたため、神像の類はありません。しかし、もっとも重要な宗教建築であるモスク(イスラムの礼拝所)のほか、絵画、カリグラフィー(書法)、彫刻、陶器やタイル、金工、宝飾、織物などの分野で、イスラム世界特有の造形美が生まれ、7世紀から近世に至るまで中東とその周辺地域、中央アジアなどイスラムの影響を受けた国々で発展しました。

青いドームが美しいイスラム美術館

1998年に開館したマレーシアのイスラム美術館は、クアラルンプール鉄道駅の近くにあります。国立モスクの方角に歩いて10分もすると、美術館の特徴的なターコイズ・ブルーのドームが見えてきます。建物自体がイスラム美術のエッセンスを伝えるものになっており、玄関のタイル装飾にはイランのタイル職人が、ドームの建築にはウズベキスタンの職人があたったそうです。

東南アジアで最大級の豊富なコレクション

館内は12の展示室に分かれています。1階 には「建築」、「クルアーン(コーラン)と写本」の展示室があります。また「インド」、「中国」、「マレー」展示室も同じ階にあります。上の2階 では「テキスタイル」、「宝飾」、「武器・武具」、「コイン」、「金工」、「木工」、「陶器」などの展示室があります。美術館によると、収蔵品は7000点を超えるそうで、見る物も多い上に説明文(英語)も添えてあるので、じっくり見ていると、あっという間に半日経ちます。この美術館の特徴は、マレーシアの位置するアジアにおけるイスラム美術ですので、アジア地域に焦点を合わせた「インド」「中国」「マレー」展示室は特にお勧めしたいところです。

世界のモスクを模型でひとめぐり

「建築」展示室には、世界各地のモスクなどの精巧な模型があります。サウジアラビアにある聖地メッカのハラーム・モスクや、エルサレムの「岩のドーム」のほか、墓廟の例としてインドのタージ・マハールなど、著名なイスラム建築の構造を知ることができます。興味をもってモスクを訪問しても、異教徒の外国人には入れないエリアもあったりするので、建築に興味のある人には魅力的な展示だと思います。(後篇に続く)