やはりマレー系の染織コレクションが素晴らしい

階段をはさんで向かいの「トゥルック・ブランタイ」ギャラリーは、マレー系の文化にフォーカスしています。金糸や銀糸を織り込んだマレー世界の錦織「ソンケット」や、先に糸を染めてからデザインに合わせて織る絣「カイン・リマール」などの織物のほか、シルクやベルベットに金糸・銀糸で刺繍した「テカタン」や「ケリンガン」など、主に王宮で発展した工芸品も見られます。マレー半島は東西交易の中心地であっただけに、インドやアラブなどのイスラム文化、隣のインドネシアの影響が感じられます。「トゥルック・ブランタイ」は、ソンケットなどに見られる「重なり合う葉っぱ」をイメージした連続模様のこと。この博物館でもっとも力の入ったコレクションと言えるでしょう。

多文化が織りなす美しい染織品の数々。マレーシア国立テキスタイル博物館(後篇) 多文化が織りなす美しい染織品の数々。マレーシア国立テキスタイル博物館(後篇)

「虹」のようにいろいろな文化で構成されるマレーシア

階段を下りて、正面入り口に向かって左手にあるのが「ペランギ」ギャラリーです。「ペランギ」は虹のこと。中国系の移民がマレーに定住するようになって生まれた融合文化「プラナカン」や、インド人、サバ州・サラワク州など東マレーシアに住む先住民族など、さまざまな要素で構成されることを、7色からなる虹にたとえたものでしょう。もともとの衣装や、マレー半島の気候や文化の影響を受けて変わっていった様子など、服飾から歴史を感じます。渡来した中国商人などとマレー女性のカップルの子孫を「プラナカン」と呼びますが、19世紀末か20世紀初頭のものといわれる、プラナカン女性の刺繍によるテーブル・ランナーなど、手の込んだ作品が残っています。

見逃せない、19世紀のインドの絹絣「パトラ」

最後に、正面玄関に向かって右手の「ポホン・ブディ」ギャラリーへ。「ポホン・ブディ」は東インド原産のバンヤンの木のことで、じゅうたんやバティックなどで、しばしば「生命の木」のモチーフに用いられます。この展示室は、マレーシアの歴史と、外国文化の影響を受けて、マレーシアの織物や装飾の技術がどう発展したかをテーマにしています。制作工程や使用する道具などもあるので、染織に興味がある人にとっては学べる展示です。インドやインドネシアにルーツをもち、マレーシアでは主にマレー半島の東海岸で発展したバティック(ろうけつ染め)や、ボルネオ島の先住民によるビーズ刺繍などの工程もわかりやすく展示されています。その中に、19世紀のインドの絹絣「パトラ」が展示されています。鮮やかな赤を基調に、ダイヤ型のモチーフが印象的な一枚です。経糸(たて糸)と緯糸(よこ糸)の両方を、デザインに合わせて染めた糸で織った、高度な技術を要する織物ですので、お見逃しなく。

暑さからの一時避難所としてもおすすめ

時間があれば、それぞれの工芸品についての映像資料を見ることもできます。展示だけではイメージしにくいことも、説明つきのビデオならわかりやすいので、外国人観光客にも人気です。便利な場所にあるので、観光の合間にひと休みする場所としても、なかなか快適な空間です。暑い時期は35℃近くになる、常夏のクアラルンプール。冷房のきいた涼しい博物館で、工芸品を眺める半日を過ごしてみませんか。