自由に変わる時制

マレーシア英語の続きです。マレー語の動詞は、時制で語形が変化しません。はっきりさせる必要があるときには、「すでに〜した」とか「まだ〜ない」といった助動詞や、「今朝」「きのう」のような時を表わす副詞を用います。マングリッシュでも、ときどきマレー語式に動詞の語形変化が無視されることがあります。曲者なのは last time(以前)、next time(今度)などで、過去か未来かはわかるのですが、どのくらい前または先なのかがはっきりしません。同様に、tomorrow(明日)もかなり自在な表現で、たとえばお店に買い物に行って、めざすものがなかったときに“Tomorrow come.”(明日入るよ)と言われて次の日に行ってもない、ということは何度もありました。「翌日」というよりは、翌日以降の(漠然とした)未来と理解すべきなのでしょうが、慣れないと混乱します。

英会話が苦手な人にもやさしい、マレーシア英語「マングリッシュ」入門(その3) 英会話が苦手な人にもやさしい、マレーシア英語「マングリッシュ」入門(その3)

マレーシア式に変化した「できる」

可能の助動詞canもマングリッシュでは独自の変化を遂げています。「たとえば助動詞のcanを例にとれば、“Can lah?”は、『これをやってもらえるか』『これでいいか』『私がそれをやってもいいか』など、声の調子と表情によって意味が変わる。“How can !”も『絶対にだめ』という意味だが、『賛成できないな』という程度から道徳的観点からの激怒まで、さまざまな色合いの『だめ』を表わしている。」(ハイディ・ミューナン『カルチャーショック05 マレーシア人』河出書房新社、1998年) 「〜に行けますか」は“Can go-ah?”で、答えは“Can, can.”(できます)だったり、“No can go.”(できません)だったりします。

「ない」「〜ない」もヴァリエーションが多い

否定の形も、マングリッシュは多様です。「ありません」が“No have.”で、「いりません、結構です」は“No need.”をよく聞きます。たとえば、パンを買って「スライスしましょうか?」とお店の人に聞かれたときは、“No, you don’t have to slice it.”(切らなくて結構です)というよりは、“No need.”の方が通じます。

びっくり!も民族によっていろいろ

そのまま日本でも意味が通じそうなのは“Alamak!”(おやおや)で、あるときわたしが「あらまあ」と言ったら、「マレー語と同じ」と地元の知人に笑われました。そのほかに“Aalaah.”(ああ)、“Amboi!”(あら、へえ)というマレー語もあります。わたしの中国系の知り合いは、“Haiya!”“Aiyo!”をよく使います。また、音が似た“Aiyoyo!” はタミール語起源で、「ああ、悲しいかな」というニュアンスがあるそうです。もちろん、英語の中でもこうした表現が使われます。(その4に続く)