寝ぼけた息子の「火事場の馬鹿力」

クアラルンプール空港の長いコンコースを、搭乗口と反対の方向へ、「待って、待ってー!」と半べそをかいて猛然と走り出した息子。とっさに、ジェスチャーで周囲の搭乗客たちに私たちの荷物の番を頼み、私も走ってあとを追いかけました。周りの人たちも、「早く行ってやれ」と目で合図してくれます。ぴかぴかに磨き上げられた床を靴下のままで走っているから、滑って頭を打たないかとはらはらしながら追いかけますが、信じられないようなスピードで行ってしまうので追いつけないのです。

幼い子供連れでハードな移動をしてみての教訓あれこれ(後編) 幼い子供連れでハードな移動をしてみての教訓あれこれ(後編)

親子共々パニックになってはダメ!

この奇妙な追いかけっこの最中、私は「飛行機の中ではあんなにはしゃいで見えたけど、やはり心の底に不安を抱えていたのか」と、小さい子供を連れてきたことを後悔し、自信を失いかけていました。でももうここまで来たのだから、帰ることはできません。立ち止まり、息を大きく吸い込んで呼吸を整え、落ち着いた声が出るように注意して、息子の名前を、心を込めて2回呼びました。すると背中がビクンと反応し、くるっとこちらへ向き直って駆け戻ってきました。母親が取り乱した声では、子供が悪夢から覚めてくれません。子供がパニックになったとき、一緒になってパニックになってはいけません。逆に『子供がパニックになったら落ち着け』です。

初めての外国で息子が注目したことは?

最後に、これは大人と一緒の旅行でもいえることですが、子供相手だとさらに注意しなければならないという例です。息子は、初めて見る外国人の様子にとにかく興奮して感銘を受けていました。初日、東京からペナン、クアラルンプール、アンマンへと大移動したので、彼にとって初めての外国は、ペナンの空港ということになりました。1時間ほどのトランジットの間、息子は待合室のベンチに収まって緊張していました。「疲れた?大丈夫?」と聞くと、落ち着きなく辺りに目を走らせながら言いました。「うん、あのね、あの女の人たちはどうして布をしっかりかぶっているの。どうして髪の毛がぜんぜん見えないの。」

気を引き締めることをつねに忘れずに

イスラムの女性を初めて見てとても驚いているのです。私はそこでイスラムの説明をひととおりしました。それはふだんの生活では訪れるチャンスのない、旅先ならではの楽しい会話でした。しかしその反面、会話中は緊張感がゆるみがちなのです。子供と一緒だと、ついつい、家の中でしゃべっているような感覚に陥ってしまいます。大人と一緒でも日本語でしゃべっていると緊張はゆるみますが、心のどこかで「外国にいるのだから気をつけなきゃ」と気を張っています。子供はやはり吸い取られるエネルギーがちがうというか、親が集中してしまうのですね。『子供との会話も周囲への目配りも両方忘れずに』。子供との旅行には珍エピソードがまだまだどっさりあります。旅は子供を成長させ、親の度量が試される機会です。なによりも安全第一、健康第一です。無理や冒険は避けて、よい旅を!