マレーシアの熱帯ジャングルはどこにあるのか?

マレーシアを旅していると、熱帯らしい旺盛な緑をしばしば見かけます。少し手を掛けないでおいたら、あたり一帯を覆い尽くすように繁茂する生命力のみなぎる木々です。しかしかつて、金子光晴が名著『マレー蘭印紀行』で書いたようなジャングルはどこにあるのでしょうか? その著書にはこんな一節が━━森はまだ、太古のまゝで、野獣どものたまらない臭さをはこんで彷徨うている━━そんなジャングルが、実はクアラルンプールからバスで2時間、ボートで3時間のところにあるのです。それが「タマンネガラ国立公園」。マレーシア政府観光局によれば、「ゾウやヒゲイノシシ、トラ、マレーバクなど野生動物や、250種類にも及ぶ野鳥、300万種の昆虫が生息している」というのです。最寄りの町はジェラントゥート(Jerantut)。ここから細長いボートにの乗って、川をさかのぼる時、確かにそこには金子光晴の描いたジャングルがあったのです。

マレーシアの国立公園「タマンネガラ」でジャングル・キャンプ マレーシアの国立公園「タマンネガラ」でジャングル・キャンプ

森の尿(とばり)の意味がわかった

ジェラントゥートからボートで川をさかのぼります。周囲には川とジャングルしかありません。船外機の音に抗議するように、動物の咆哮する声が聞こえてきます。「川は放縦な森のまんなかを貫いて緩慢に流れている。水は、まだ原始の奥からこぼれ出しているのである。それは、濁っている。(中略)それは森の尿である」(『マレー蘭印紀行』より抜粋)。たしかにそんな色でした。オリーブブラウン色に茶褐色を混ぜたような色です。長いはずの3時間の船の旅は、あっという間です。ジャングルに来たことが、汗でべとつく肌で感じられます。国立公園の中には宿泊施設は『ムティアラ・タマンネガラ』だけです。対岸のクアラ・タハン村にはいくつかホテルなどがあります。僕はムティアラ内の芝の敷かれたキャンプサイトでテントを張ることにしました。料金は130円程度です(2016年7月現在)。

マレーシアには、先住民族がいたのだ

キャンプサイトは、整備されていますので、問題ありません。夜にはナイトツアーが出発します。スタッフが英語で丁寧に説明してくれます。真っ暗なジャングルを、懐中電灯を手に進みます。「ブンブン」という観察小屋が森の中に建てられています。かなり高いところにあって、階段を上ると、窓がありません。ここで寝ながら観察できるように、マットも準備されていますが、この夜はみんな一緒にホテルに戻りました。夜、どこかで何かの声がして、じんわりと冷たい湿気が体にまとわりつきます。翌朝、近所で煙が上がっています。マレー人とは顔つきの違う、パプアニューギニア人のような顔の人たちが、掘立小屋にいました。「オラン・アスリ」と呼ばれる先住民族だそうです。焼き畑農業をしながら、国立公園の中で暮らしているのです。こんなジャングルは、もちろんマレーシアの人にも人気です。