見た目はワイルド、でも繊細な味

シンガポールのローカルフード代表として必ず挙がるのが、「フィッシュヘッドカレー」です。大きな魚の頭が、カレースープにドカンと入ったビジュアルは豪快そのもの。しかも半開きの魚の口からはギザギザ尖った歯が見えていたりして、それを見るとちょっと引いてしまう人もいるようです。でも味は意外なほど繊細でふくよかなんですよ。まだ食べたことのない人はぜひチャレンジ、もう食べている人は食べ比べのチャンスとして、シンガポールへ行ってみましょう!

廃物利用がいまや国の代表料理。シンガポールの「フィッシュヘッドカレー」 廃物利用がいまや国の代表料理。シンガポールの「フィッシュヘッドカレー」

魚の頭に、歴史と食文化の真骨頂を見る!

多民族国家であるシンガポールには、多くのインド系住民がいます。彼らはおもに南インドから労働者としてやってきました。南インドのケララ州では、魚をよく食べます。シンガポールの魚市場で魚の頭が切り落とされ、捨てられてしまうのを見たケララ出身の労働者たちが発明したのが始まりだそうです。1950年代、“もったいない”精神が生み出した廃物利用の料理が今では国の代表料理となるのですから、料理というのは本当に奥深いものですね。

インドらしい味付けの2店

このカレーに用いられるのは、鯛の仲間である「イカン・メラー」。これがまたびっくりするほど大きいのです。カレーはとろみの少ない、さらっとしたスープ状。辛いけれど、白身魚のうまみと甘みがだしになって、奥行きのある味わいになっています。ふだん肉のカレーや野菜カレーを食べつけている人にとっては、新鮮な驚きとなるに違いないことでしょう。シンガポールには、フィッシュヘッドカレーの名店がいくつかあります。人気を二分しているのは、リトルインディアにある「バナナリーフ・アポロ」と「ムトゥース・カリー」の二店舗です。私も行きましたが、おいしいのはもちろんのこと、ごはんや付け合わせのおかわり自由の南インドスタイル。ここはインド流に手で食べるのがおすすめです。魚の細かい骨の周りにくっついている身は、スプーンやフォークではきれいに取るのが難しいですからね。

いろいろな味のバリエーションがあるんです

さて一言で「フィッシュヘッドカレー」といっても、実はバリエーションがあります。ご紹介した二店舗はいずれもスパイス重視のインドスタイルの味付けです。この他に、チャイニーズスタイル、プラナカンスタイルもあるのです。チャイニーズスタイルは汁気が多く、クレイポットに入っていて、ちょっとカレー鍋のようです。タマリンドの酸味を効かせているのが特徴です。後者の「プラナカン」とは中華とマレーの融合文化のことです。プラナカンスタイルのレストランは数が少ないのですが、マレーらしくココナッツミルクをたっぷり使っています。チャイニーズの有名店はトア・パヨにある「オーシャンカリー」、プラナカンならジョーチアットの「チリパディ・ニョニャレストラン」。どれが一番あなたの口に合うか、お店を探してみてください。