ミュージアムめぐりが楽しいシンガポール

シンガポールは東京23区ほどの広さの都市国家です。国土が広くない部分、交通網がよく発達していて、公共施設、特に文化施設の充実ぶりには定評があります。博物館や美術館が好きな人にとっては、なかなか飽きないところで、展示の説明が英語なのも日本人にはありがたいことです。さて、そのシンガポールの誇るシンガポール国立博物館が、2011年から公開を始めたのが「ウィリアム・ファークァー・コレクション」です。新しくできた常設ギャラリーで展示されています。

珍しい動物を絵で紹介。シンガポール国立博物館「ファークァー・コレクション」(前篇) 珍しい動物を絵で紹介。シンガポール国立博物館「ファークァー・コレクション」(前篇)

マレー半島の動植物を描いた477枚の自然絵画

「ウィリアム・ファークァー・コレクション」は全部で477枚。19世紀に描かれたもので、内容はマレー半島の植物や鳥類、哺乳類、爬虫類、魚類などの水彩イラストです。温帯に住む日本人にはどれも珍しいものばかりですが、今では絶滅してしまった種も含まれている点で、記録としても貴重です。画商サザビーを通じて全コレクションを入手した人が、1996年にシンガポール国立博物館に寄贈しました。寄贈者の希望により、寄贈者の父親(故人)の名前にちなんで「ゴ―・セン・チョー・ギャラリー」と名付けられています。477点を一度に展示できないので、約70点を順番に展示しているそうです。

ファークァーがいた頃のマレー半島

ウィリアム・ファークァーは、イギリスが拠点を定めた植民地シンガポールで最初の理事官だった人物です。やはりイギリスが支配していたマラッカ(現在のマレーシアの都市)に1803〜1818年まで駐在した後、1819〜1823年にシンガポールに滞在し、スタンフォード・ラッフルズと共に初期シンガポールの植民地建設にあたりました。19世紀、シンガポールは貿易の拠点を求めてやってきたイギリスに支配されていました。イギリス東インド会社が東西の交易で利益を上げていて、一企業でありながら、特権的な立場でマレー半島の港や都市を統治していました。

珍しい動植物への関心の高まり

当時ヨーロッパでは、博物学への関心が高まっていました。イギリスやフランスが植民地政策をとって次々と国外に進出したため、それまでには見たことのないような動植物が多く紹介されたからです。世界で最初といわれるロンドン動物園が開園したのは1828年、そしてチャールズ・ダーウィンが『種の起源』で進化論を発表したのは1859年で、同時代にあたります。ロンドン動物園の母体となったのはロンドン動物学協会で、ラッフルズはその初代会長に就任し、動物園の設立に尽力したことから、「ロンドン動物園の父」とも呼ばれています。インドやインドネシア、マレー半島で長く暮らしたラッフルズは、珍しい動物の飼育や研究のための施設が本国イギリスにも必要と考えたのが動機だったようです。(後篇に続く)