シンガポールにヒンドゥー教寺院は数多くありますが……

「多民族国家で宗教に寛容なシンガポールなら、ヒンドゥー教寺院だけじゃなくて『シーク教寺院』もきっとあるはずだ!」各国を旅するとき、さまざまな宗教施設を参拝してみるのが好きな私は、そう思い立ってネットで検索を重ねました。シンガポールに暮らすインド系民族の割合は9%に過ぎませんが、街中にたくさんのヒンドゥー教寺院があることはよく知られています。2011年、シーク教寺院を探し当てて行ってみました。

シンガポール、ヒンドゥー教を改革したシーク教の寺院を訪ねて(前編) シンガポール、ヒンドゥー教を改革したシーク教の寺院を訪ねて(前編)

行き方は意外に簡単

MRT「アウトラムパーク」駅からタクシーに乗り、「シークテンプル。インディアンテンプル」と言ってみると、運転手さんはすぐにわかってくれました。ジャラン・ブキッ・メラ通りをシンガポール総合病院方面へ向かい数分走ると、左手に目的の建物が見えてきます。もっと宗教色の薄い、ビルのような建物を予想していましたが、玉ねぎ型の屋根を配したデザインの、インドらしい白亜の建築です。よく手入れされた建築の立派さだけでも、シーク教がシンガポールにおいてもしっかり根を張った宗教であり、多くの寄進が集まっていることを物語っています。

シーク教ってどんな宗教?

シーク教は、多くの日本人にはなじみ深い宗教とはいえないかもしれません。15世紀から16世紀にかけて活動したインドの宗教家グル・ナーナクによって開かれた宗教です。新しい宗教だけあり、ヒンドゥー教とイスラム教のいいとこ取りともいえるシンプルで合理的な教義が特徴です。男女の差別がなく、外国人や異教徒にも平等、頭髪を覆っていれば自由に内部を見学することができる、つまりツーリストにとって非常に“助かる”教えです。私も受付で1シンガポールドルを払って髪を覆う三角巾を借りました。異国の異教徒である私に対して、受付の男性たちも参拝の人々も皆本当に親切してくれて、教義がきちんと守られていると感じました。

突然の来訪者にもウエルカム。そして内部へ……

受付では参拝者が両手を差し出し、供物のお下がり(米を煮た甘いお菓子)をスプーンで載せてもらっています。もちろん、異教徒の私にも食べさせてくれます。その味は、昔行ったシーク教の総本山であるインドのアムリトサルの黄金寺院で頂いた供物と同じ味でした。私が感激して思わずそう話すと、皆さんは「へえ、総本山へ行ったの!僕も行ったよ。美しいところだよね。」などとおおいに盛り上がり、いつの間にやら、たまたま通りかかった年配の女性に「この日本人を案内してあげて」ということになっていました。私はとっさに「ありがたいけど、自分のペースで見て回れないのは少し面倒かも」と思ってしまいましたが、この女性がいてくれたおかげで、ここでのひとときはますます忘れがたい素晴らしいものになったのです。(後編へ続く)