参拝客の女性の案内で見学

シーク教寺院で私を案内してくれた女性はバーさんといい、(名前はおばあさんみたいですが)きわめてインテリジェンスが高く、やさしくユーモアがあって愛国心と信仰心も厚い、素晴らしい人でした。「シーク教に関心があります。総本山のアムリトサルにも行きました」と旅行中の日本人がいきなりシンガポールの寺院にやってきたら、彼らからすればとにかく歓待したくなるのかもしれません。祈祷の場所や灯明を捧げる場所などを、丁寧に説明してくれながら歩いていきます。バーさんは、シーク教がすべての人間に平等にひらかれた宗教であるということをことあるごとに強調していました。

シンガポール、ヒンドゥー教を改革したシーク教寺院を訪ねて(後編) シンガポール、ヒンドゥー教を改革したシーク教寺院を訪ねて(後編)

食事の無料提供もありがたくいただきました

シーク教寺院では無料の食事が誰にでもふるまわれます。バーさんは「食堂に入って食べていきなさい。本当は食事のお礼として洗い物の手伝いをしていくのだけど、あなたは時間のない旅行者だからしなくていいわ。私が代わりにやるから!」と言ってくれました。ありがたくお言葉に甘えて食堂へ入ってみると、数百人が一度に座れることのできそうな広さに圧倒されました。シンプルなダル(豆)のカレーとチャイをいただきました。周りを見回すと、歓談しているカラフルなターバンやサリー姿のシーク教徒に交じって、私のような異教徒らしき人もおり、中には見学というより明らかに“施しの食事目当て”という雰囲気の白人のおばさんも見かけました。けれどもどんな人にも等しく、おいしい食事が提供されるのです。

シンガポールの市民としてのプライドを持った女性

食堂でチャイを飲みながら、しばしバーさんと語り合いました。バーさんは、「シンガポールでは、すべての民族が交じり合って住んでいるの。マレー、インド、チャイナ。コミュニティーを作ったりはしないわ。下手にコミュニティーを作れば衝突の元になる。あらゆるところで交じり合って住んでいれば、諍いは起こらない。この国のプレジデントは、本当に頭がいいわよ」と言います。そういえば、チャイナタウンの中にヒンドゥー教寺院もあるし、アラブストリート辺りにもおいしい中華料理店があります。それにしても、自国の政策にここまで満足しているなんて、日本では想像しにくいことです。この国にももちろん問題はあるでしょうが、市民が胸を張って「ウチのプレジデントは頭がいい」と言えるなんて、少しうらやましい感じがしました。

最後まで感激づくめの寺院探訪

帰り際、借りていた三角巾のターバンを返そうとすると、受付の男性は「持って帰っていいんだよ。これで世界中のシーク教寺院に入ることができるだろう?」ますますシーク教に親しみが湧きました。日本人になじみの薄いシーク教ですが、是非シンガポールの寺院に行ってみましょう。ただし、観光施設ではないので、人々の宗教的感情を害さないよう十分振る舞いに注意してください。無料の食事も「タダで食べられてラッキー」という態度は厳禁、後片付けまできちんとやりましょうね!