植民地時代の面影をさがして

シンガポールでタイムスリップするのは意外と簡単です。小さな国土に高層ビルがひしめき合うというイメージの強いシンガポール。しかし大通りから1本外れてみるだけで、植民地時代の名残りを色濃く伝える歴史的建築物が点在し、その中を散策することができるのです。「歴史的建築物」といっても、大規模な教会や寺院などではありません。英領時代に住居として建てられた個人用の邸宅、それがシンガポール名物「ブラック・アンド・ホワイトハウス」です。

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ブラック・アンド・ホワイトハウスとは?

ブラック・アンド・ホワイトハウスとは、1898年から1941年の植民地時代に建てられた一戸建て(もしくはテラスハウス形式のもの)の建築です。熱帯気候のシンガポールは年中が高温多湿、雨と暑さをしのぐことは建築物の最重要課題でした。植民者のイギリス人が快適に過ごせるよう、長いひさし、大きな窓、高い天井とバルコニーやテラスといった特徴を備えた住居が次々と建てられました。もとはイギリスの植民地の先輩であるインドのバンガローを手本とし、やがてマレースタイルの高床式も取り入れられて発展しました。木造とレンガを組み合わせ、壁は白塗りで木造の木枠を黒く塗ることから「ブラック・アンド・ホワイトハウス」と呼ばれるようになりました。

オーチャート通りの裏手を散策してみよう

改修が施されて美しく生まれ変わったブラック・アンド・ホワイトハウスは、現在500軒ほど残っており、個人宅よりも店舗として活躍している建築が多いようです。私も、オーチャード通りの裏手ナッシム・ロードに並ぶブラック・アンド・ホワイトハウス群を何度か見に行ったことがあります。華やかで1年中がパーティーシーズンのようなオーチャードとは別世界の、静かで緑の濃い通りで、写真で見て憧れていた美しい建築にうっとりしました。昼間の強い陽射しに輝く白亜の壁もすてきですが、夕闇にほんのりと浮かび上がった繊細な佇まいも、コロニアルムードに満ちたすばらしいものでした。ここに、日本文化を紹介する施設「ジャパン・クリエイティブ・センター」や高級スパ「スパ・ブティック」もあります(ただしこちらのスパの腕はあまりよくありませんでした。すてきなのは建物だけ)。

変わっていくばかりのシンガポールではありません

シンガポールは歴史が浅い国である上に、常に何か新しい建物を建てていて、古いものは一掃されていくと思われるかもしれません。しかし目を裏道に転じれば、こんな東西文化の申し子のような歴史的建築物が現存しています。意識しなければ「ただのオシャレな建物」として通り過ぎるだけですが、ブラック・アンド・ホワイトハウスを見つけたら、バルコニーや窓枠の意匠に注目して、往時の面影を偲んでみましょう。