いよいよ洗礼式が始まりました

教会の庭にある洗礼用のプールは、長さが3メートルほどで、深さは大人の男性が直立すると腰まで浸かるほどの深さです。水はお世辞にも澄んでいるとは言いがたいものですが、信者さんたちはそんなことは気にせず、手に手にカメラを持って、ぎゅうぎゅう詰めになってプールを取り囲みました。やがて性別も年齢もバラバラな4人の入信者が現れ、一人ずつ洗礼を受けました。礼拝にいたときのままの普段着で、躊躇なく水に入っていきます。そして主教もまた、つい先ほどまでとまったく同じ法衣のまま、ざぶざぶと半身を水に浸けました。

シンガポール、セント・アンドリュース教会での出会い(その3) シンガポール、セント・アンドリュース教会での出会い(その3)

ずぶ濡れの人々にただ驚き……

その迷いのない足取りに、私は少し驚きました。いくら年中暑いシンガポールとはいえ、やっぱり水は冷たいだろうに。あの人たち、あんなにずぶ濡れになって、どうやって家まで帰るんだろう? 水の衛生状態も気になるなあ…。そんな私の俗っぽい関心事をよそに、入信者の方は主教や司祭(はっきりした階級はわかりませんが)たちに支えられて、後ろ向きに倒れます。そして全身がざばっと水に潜るとまたすぐに抱き起こされました。あれが「今までの自分は一度死に、信者として新しい生を受けた」という意味なのだろうと思いました。

いつしか私も感動の波に飲まれる!

4人は、それぞれ本当に生まれ変わったような晴れ晴れした表情を浮かべます。びしょびしょの本人たちと主教さんも、周りを取り囲む信者さんたちもみんな笑顔。4人に口々にお祝いの言葉を投げかけ、拍手で門出を祝っていました。私も胸に感動が込み上げ、周りの出席者とともに、自然に拍手と声援を送っていました。ふだんは宗教とまるで縁遠い生活をしていますが、このときは偶然ながら「人の大きな節目に立ち会った」という経験をしたのです。人の親切と偶然に導かれ、こんな経験ができてしまうのも旅のよさです。

これもシンガポールの姿です

暑さしのぎと建築を見学する目的で、ちょっと立ち寄ったつもりのセント・アンドリュース教会は、私にとってとても幸せな時間をくれた場所となりました。もし機会があったら、グルメとショッピングだけではない、素顔のシンガポールに触れに、行ってみてください。