便利なようで不便なシャトルバス

「ヘイ・デイリーズ」を後にし、そろそろMRTクランジ駅に戻らなければならない時間です。といっても、そのときはシャトルバスがヘイ・デイリーズに来なかったので、またも暑い最中をとぼとぼ歩いて「ジュロン・フロッグ・ファーム」まで戻りました。「クランジ・エクスプレス」という名前のこのシャトルバスは、料金一律の乗り降り自由で便利なようですが、時刻表をよく見ると1時間から2時間に1本という大変のんびりしたバスなので、よほど綿密に計画をするか、私のように数キロは歩いてもいいと思っていないと厳しいですよ。

シンガポールの農畜産業・4 シンガポールの食料自給率を上げる、夢の垂直農場 シンガポールの農畜産業・4 シンガポールの食料自給率を上げる、夢の垂直農場

世界初、商用化した夢の「農場」

「ジュロン・フロッグ・ファーム」からクランジ駅に戻るバスの車窓から、シンガポールでどうしても見たいとずっと思っていた光景を目にすることができました。それは、「垂直農場」です。このシステムは、シンガポールのスカイ・グリーン社が2012年に世界で初めて商用化に成功させました。アルミ製の棚に葉菜を何段も並べ、高さ9メートルのタワーを8時間かけて上下させます。作物は、上部へ行けば日光をたっぷりと浴び、下部では水を吸収するのです。ネットでこの記事を読んだ2012年から、いつか見てみたかったのです。

閉鎖型循環システムで省エネルギーを実現

そろそろ暮れかけてきた空を背に何棟も並び建つファームタワー。その光景は新しい農業の姿、新しい国の姿を見せつけてくれるものでした。棚を上下する動力は水力システム。消費電力は一日あたりわずか60ワットです。しかもその水は最後には野菜の水やりに利用されます。まさに未来の農業。輸入野菜よりも値段は張りますが新鮮で、気象条件に左右されないため安定供給が望めます。何よりもそのカッコよさに、私はただ興奮して見とれていました。日本でも、たとえば塩害などで農業を続けるのが難しくなったときに一時的にでもこのシステムを導入すれば、農家の救いになるのではないか? 夢のような光景をみてそんなことも夢想したのです。

ふつうの旅行者がまず知らないシンガポールを見られます!

多彩な食文化に驚いたことがきっかけで、シンガポール国内での農畜産業に関心を持ち、「クランジ・カントリーサイド」を旅してきました。「ボリウッド・ベジー」では有機野菜農園とそこで収穫した野菜を食べられるレストランを、「ジュロン・フロッグ・ファーム」では食用ガエルの養殖場とカエル肉の販売を、「ヘイ・デイリーズ」ではヤギ酪農場とヤギミルクの販売を見てきました。そしてスカイ・グリーン社の「垂直農場」で農業の未来を予感しました。ほんの半日でしたが実に有意義な滞在でした! 小国の食料自給率向上への取り組みについて、どれだけ文献を見るよりも、実際に歩いて口にしてみる方がずっと体感できます。このちょっと風変わりな半日旅行はおすすめですよ!