- 神谷
- 東京都在住。漫然とさすらっていた学生時代の旅から、テーマのある旅へとスタイルが移りました。現在は「その国と日本とのつながり」を頭に置いて旅をしています。地を這う旅からリゾート、自然観察、文学、アート、建築を追う旅までなんでもテーマにして書きます。旅と同じくらい文章を書くのが大好き。お楽しみに!
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流麗なデザインに酔いしれる、台湾・日月潭の向山ビジターセンター
台湾は、さまざまな面で日本と深い関係がありますが、現代建築というジャンルも例外ではありません。多くの日本の建築家が台湾で活躍しています。私は、海外で日本の建築家の作品を見たり、日本で海外の建築家の作品を見たりするのが好きなので、近くてすぐに行ける台湾はうってつけの国でもあります。今回は、日月潭にある「向山ビジターセンター」を訪れました。
台湾中部にあるダム湖、日月潭(にちげつたん/リーユエタン)は、風景の美しさから人気の観光名所です。2011年、ここに新しく向山ビジターセンターがオープンしました。日本人建築家の團紀彦氏の設計で、同年に台湾建築賞を受賞しています。この建築の写真をたまたま見て、そのデザインに強く惹き付けられました。コンクリートの、波のように優美な曲線を一目見てみたくて、バスターミナルからレンタサイクルを駆ってやってきました!湖の周囲にはきちんと整備されたサイクリングロードがあるため、海外といっても、風景を楽しみながら安心して走ることができます。
ビジターセンターの姿が見えてきたときにはうれしくて胸が高鳴りましたが、近づいてみても、広々とした敷地を有しながらまったく圧迫感がありません。地上2階建てという低層建築であることも理由の一つですが、それ以上に、直線的な箇所がほとんどなく、ひたすら流麗な曲線でかたちづくられた建物なのですね。うねるような建物を、いくらまわっても見飽きないのです!コンクリート製ですが、心憎いことに、場所によっては表面に木目模様を刻んであります。これにより、とっつきにくい現代建築に温かみが生まれていると感じました。
前衛的なデザインに目を奪われがちですが(そしてそこに抵抗感を覚える人もいるようですが)、もしもこの風光明媚な湖の畔に、ただの四角い箱が建っていたとしたらどうでしょう?湖の景観はまったくぶち壊しになるのではないでしょうか。コンクリートという、現代的でチープで深みと無縁な素材を自在にうねらせることで、前衛的でありつつ、同時にこの土地にぴたりと寄り添うような配慮。建築家の意図を読み取れたことに興奮し、あちこちにカメラを向けては撮り続けます。どこをどのように切り取っても、岸辺に打ち寄せるさざ波のようなうねりを思い起こさせるのです。気がつけば、山のような枚数を撮っていました。
建物ばかりではなく、もちろん展示内容もすばらしいものです。とくに日月潭を紹介するビデオ上映は美しくて、またゆっくり時間をかけて日月潭に来たいと思わせるものでした。カフェテリアでは、まろやかな香りの無農薬台湾産コーヒーが飲めます。お土産品の品揃えもハイレベル。建築美と王道観光の両方を楽しめる新名所です。
※記事は掲載日時点での情報であり変更されている可能性もあります。ご了承下さい。(掲載日:2014/06/10)
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