台南でまちづくりの一例を見に行こう

現代アートで地方都市を活性化し、観光客を呼び込む試みは、日本国内でも各地で行われていますね。台湾南部の小さな街にも、そんな場所があります。台鉄台南駅からタクシーで10分ほどのところにある(もちろん徒歩でも可能)「神農街」周辺です。ふつうに歩いて30分、ゆっくりでも1時間ほどでまわれる、こぢんまりとしたエリアです。日中よりも、オープンする店が増えてライトアップが映える夕方から夜のほうが、散策にはお勧めです。

歴史ある街と現代アートは好相性

ここは、もともと清の時代から続いてきた商業地域であり、古い職人さんの店などが軒を連ねていました。この一帯を、現代の建築家やアーティストたちが、歴史的な街並みを保存しつつ新しい感覚のアート作品などを取り入れ、新旧がうまく交じり合った独特の魅力ある街へと変貌させました。私も日没を待って訪れてみましたが、歩道に突然、針金を使ったアート作品が現れたり、無残に取り壊された古い建物の壁面をそのまま活かしてペンキで大きな絵を描いてあるアートを次々と見ることができました。アートとして再生された建築の内部は、バーやギャラリーといったスペースになっています。そしてその隙間を埋めるように、ごくふつうの暮らしを営む民家もたくさん建っているのです。日本統治時代の名残りの日本式家屋もあって、今自分がどこにいるのか一瞬わからなくなるような気持ちになります。

若者や観光客を惹き付ける魅力とは

この界隈を歩いてみて、「毎日観光客が訪れては窓の中をのぞいていって、住民は居心地悪くないのかな?」と思いましたが、若者や家族連れがそぞろ歩いて楽しんでいるところを見ると、街の活性化としては完全に成功を収めていることがわかります。地元の人たちも人が来るようになったことを歓迎しているように感じました。もともとあか抜けた都会ではなく、歴史はあるが何の変哲もない一地方都市という条件が、かえって作品を際立たせ、街をグレードアップさせることに有効に働いている……そう考えながら散策していると、ある感動的な文言に出会いました。それは『鐵花開了』というタイトルの作品の前にあった解説のプレートでした。

感動的なプレートを発見

日本語訳にはこのように記されていました。「古い町がどんどん現代化していく。現代と昔とともに暮らしている私たちは幸せだ。われわれが生活していた痕跡を大切にしながら、今の暮らしが続いている。昔ながらの窓のシンボルを取りはずし、新しいシーンに取り替える。新旧文化が共存できるよう望みながら、世代の記憶を伝承し続けていく。」現代アーティストの意気込みを、私はこの文言からひしひしと感じ取りました。神農街は、アートと街がお互いを必要として無二の魅力を得ることができた、まちづくり成功事例の一つといえるでしょう。