台湾では“原住民”とはプライドのある呼称

台湾には、17世紀に漢民族が移住してくる以前から人々が暮らしていました。17世紀後半までには多数の漢民族が流入し、その人々は山奥へと追いやられました。彼らは現在、「原住民」と自らを呼んでいます。台湾における「原住民」という言葉は、日本語に含まれるような差別的な意味合いはなく、逆に“(漢民族流入以前の)ずっと昔からこの地に住んでいた”という意味の誇り高い名称なのです。2014年現在、台湾政府から認定されているだけでも14の原住民族がおり、未認定の民族はその2倍ほどいます。彼らの住む村を訪ねてみたくて、私はひとりで山へと入ってみました。目指す村は、14民族のうち特に興味を惹かれた「ルカイ族」の村、霧台(むだい/ウータイ)です。

台湾の山奥へ。原住民の村を訪ねようと、女性ひとりでトライ(その1) 台湾の山奥へ。原住民の村を訪ねようと、女性ひとりでトライ(その1)

この情報化時代になかなか情報が得られない秘境

霧台への道のりは、まず台鉄台南もしくは高雄から在来線で屏東(へいとう/ピンドォン)駅へ。屏東のバスターミナルから1時間ほど路線バスに乗って内陸へ向かいます。山岳地帯の三地門(さんちもん/サンディーメン)まで行ったらその先は……どう進むか、私にもわかりません。なぜなら、霧台は山地管制が敷かれていて、外国人が許可なく立ち入ることができない地域だからです。山に入るためにはあらかじめ入山許可証を警察署(警政署と呼ぶ)で取得しなければなりませんが、正直に屏東の警察署へ行っても入山許可証を出してくれることはまずないという噂がもっぱらです。ネットで霧台へのアクセスを探してみましたが、出てくる話は「警察署へ行って、袖の下を払って一般の車をチャーターした」「タクシーに乗り、運転手と一緒なら問題ない(外国人だけではだめだが、現地の人間と一緒なら許可証なしで入れる)」「ヒッチハイク。現地の人の車で連れて行ってもらった」という、不安になる情報ばかりなのでした。

ぶっつけ本番!とにかく行ってみる

ただ、こういう場合は検問所まで行ってしまいさえすれば、現場での手続きは意外と適当だったりするので、なんとか突破できるだろうと踏みました。それより現実的に心配なのは、霧台までの交通手段です。三地門からの路線バスは崖崩れで道路が壊れてから何年も運行を休止しており(2013年の情報でも不通のまま)、今のところ方法は次の三つです。「屏東駅からタクシー」…これは料金が相当かかるので躊躇。加えて霧台までの山道の迂回路を運転手が知らない可能性あり。「三地門からタクシー」…三地門がすでにかなり山奥の田舎で、タクシー自体がほぼ走っていません。

途中の三地門に到着

あとは「三地門からヒッチハイク。女性ひとりでは最も避けたい選択肢ですが、ああ、これしかないのか……? 三地門でバスを降りてとにかく歩き回ってみると、ここも日本のひなびた温泉町のような風情があって、なかなかいいところです。ためしに、青ネギのたっぷり入ったお好み焼きのような軽食を作る屋台へ立ち寄り、食べながら話をしてみました。(「その2」へつづく)