台南のアート横丁でも異彩を放つ作品とは

台南の海安路周辺といえば、アート感度の高い台湾の若者を惹き付けてやまないスポットです。一帯がまるごとアート横丁になっており、古い建物を利用して壁画が描かれていたり、歩道に作品が出現したりといった自由闊達な雰囲気が魅力なのです。私も台南へ行ったとき、じっくり時間をかけてこの界隈を楽しみましたが、中でも強烈な印象を残した一作品があります。それが今回ご紹介する「ランサイトウ/ブループリント」です。

ひたすら青い。台南のアート「ブループリント」を見に ひたすら青い。台南のアート「ブループリント」を見に

「ブループリント」ってどんなアート?

台南出身の気鋭の建築家/アーティストである劉國滄氏の作品で、劉氏はここだけでなく各地でブループリントという試みを展開し、いずれも話題をさらっています。劉氏のブループリントとは、古い建物の壁面を青一面に塗りつぶすアートのこと。日本でも「あいちトリエンナーレ2013」に出展したことを記憶されている方もいるかもしれません。台南の道路の拡張に伴って、沿道の住宅が削られました。切断されてむき出しになった住宅の断面をそのままブルーに塗り、元あった位置に窓や天井などを白い線で描き込み、アートとして第二の生を与えたのです。

初めてブループリントを見た衝撃……!

見に行くのは夜がお勧めです。ライトアップされたほうが、よりブルーが引き立つからです。ブルーというより、中国名の“藍”そのものの色に、目が離せないのです。見たとたんに予備知識も解釈も手放し、心に無限の自由なインスピレーションが次々生まれてきます。それを許容し、歓迎するアートがこの台南のブループリントでした。多くの人々がここを見に来ていて、かわるがわる記念写真を撮っている傍らで、私は興奮のあまり息が止まりそうでした。

「建物が残している記憶」が見える

無惨に切断されながらも、わずかにもとの姿の痕跡をとどめる昔の建物の残骸を、すべて単色の“藍”一色にべったりと塗り込め、風呂場やトイレなどがそこにあったことを示す白い線描と交互に見ることで、目の前に、見えない昔の建物が、ふっと立ち上がります。極限まで単純化することで、廃墟がとどめていた生活の記憶を呼び覚ましやすくしているのです。「建物が残している記憶」というものを発信することが、劉氏のメッセージなのでしょう。私はここではっきりと劉氏の声(メッセージ)を聞くことができました。

作者からのメッセージを聞き取り、想像は無限に

私は「これは被災地復興にも応用できるのでは」と考えました。震災などの被災地へ、より多くの人に足を向けさせるため、たとえばこのブループリントのような企画を被災地でやったら、放置よりはるかに効果的に、かつてその土地で生きていた人の像が立ち上がってくるのではないか?と。震災と道路拡張は次元がちがいますが、生活を奪われた人に思いを馳せるきっかけになるのは同じ……劉氏のアートは、そんなことにまで想像を広げさせてくれました。この力強いアートを見に、台南に行ってみてください!※2015年1月に老朽化のため取り壊され、現在は台南の新光三越前に三次元化され復活しました