「素食」は、質素な食事の意味ではありません

台湾の飲食店街を歩いていると、割と頻繁に目に入ってくる看板があります。それが「素食」です。旅行初心者のみなさんから、「あれって質素な食事のことですか?」とよく聞かれます。しかし素食は、質素という意味ではありません。日本で言う精進料理のことなのです。「素菜」とも呼びます。日本も仏教の影響で、精進料理が発展しましたが、中国では当然のことながら、日本より以前から素食料理が発展していたのです。紀元後5〜6世紀の南北朝時代には仏教の波及により、素食料理もかなり発展したと考えられています。すでに豆腐を使った料理が、素食料理の中でも重要な位置を占めるようになっていたようです。豆腐や豆料理でタンパク質をとり、米や麦で炭水化物をとり、調理に油を使うことで、脂質をとる。素材と調理法を組み合わせることで、素食でも、三大栄養素をとれるようになったのです。

市場で売られる素食のおかず屋さん 市場で売られる素食のおかず屋さん

台湾素食とは何か?

台湾に素食がもたらされたのは、福建省や上海からと考えられています。清の時代には、これらの地域から多くの人が移住し、仏教寺院も建設されているのです。台湾の仏教寺院の中には道教の神様も混在していますが、一定の人たちの食習慣として、素食が継承されたのも当然のことだったのです。今でも人口の1割は菜食主義者で、アジアではインドに次いで2位の多さと言われていますが、スリランカやネパール、バングラデシュもベジタリアンは多いので、そこまでではないような印象です。ただし、日本や中国、韓国よりははるかに多そうです。こうした台湾素食を「タイワンスーシー」と呼びます。肉や魚は一切使わず、ネギ、ニラ、ニンニク、タマネギ、卵、乳製品、動物性由来の油も一切使用しません。出汁に使うのは昆布や干しシイタケが中心です。味付けは醤油が多く、日本人には何だかなじみ深い味わいです。ただし油で炒めてから煮る調理法が多いです。

台湾素食にチャレンジ!

そして台湾素食は、見せるように工夫されており、豪華で、肉や魚の「もどき料理」が多いのも特徴です。海草類も使いますし、豆腐や湯葉、干し豆腐などがふんだんに使われます。味は結構濃厚で、日本とは豆腐の使い方がかなり違います。味が染み込みやすいという豆腐の特性を生かした料理が多く、うまいですねえ。健康志向の人たちは、油を避ける人が多いですが、脂質がなくては、野菜料理が生きません。油を使う素食は、三大栄養素の原則に適しているのです。ただし、最近は、油ひかえめ目の店も増えてきています。「素食」の看板が出ていたら、迷わず飛び込んでみましょう。できたおかずを選んで注文する店がほとんどなので、困ることはありません。高級店では『春天素食』、『長春素食』、そして最高峰と評判なのが『蓮連齋』です。庶民の店でも、高級店でも1度試してみてください。病みつきになるかもしれません。