屋台の鉄板からジュワーッといい音がする。その正体は?

バンコクに住んでいた頃、会社の帰り道に、よくその屋台の前で釘付けになっていました。ジュワーッといい音がして、見ているとどうしても食べたくなってしまうのです。その場で食べてもいいのですが、やはりビールが欲しい。そこでおばちゃんに注文します。まずたっぷりの油を引いて、そこに水で溶いた片栗粉をまぶした小さめの生ガキを投入します。この時、ジュワーッといい音がして、カキを炒めます。しばらくしてからもやしを投入、ナンプラーを掛けながら、合わせて炒め、最後に溶き卵で混ぜながら固めます。名前は「ホイトート」、タイ名物の「カキの卵焼き(あるいはお好み焼き)」の出来上がりです。

なぜ日本にないのか不思議なくらいうまい、カキのオムレツ『ホイトート』 なぜ日本にないのか不思議なくらいうまい、カキのオムレツ『ホイトート』

暑いところで食べのが、またうまい!

これだけでは到底、お腹いっぱいになりませんので、隣の屋台でもうもうと煙を出しながら焼いている、小ぶりの焼鳥「サテ」も20本買い求めます。サテとはマレーシアやインドネシアで有名ですが、タイでも同じくサテと呼びます。特徴は甘辛のピーナッツソースに絡めて食べることです。行きつけの駄菓子屋でビールを買って、アパートの部屋に持ち帰ります。クーラーのない部屋は暑いのですが、天井にぶら下がるタイプの南国特有の扇風機が風を回して、幾分涼しく感じられます。まずはビールをグイッとやって、サテを2、3本いただきます。そして皿に出したホイトートに箸を伸ばします。シャッキシャキのもやしとプニョンとしたカキの食感は対照的なのですが、それらが卵というつなぎのおかげで、絶妙な一体感を持つのです。シャキシャキ、プニョン……噛むごとに、もやしとカキの香りがふんわりと鼻から抜けて行き、どうしたって一気に食べてしまうのでした。

ホイトートはどこから来たのか?

このホイトート、油を少なくして作ったものを「オースワン」と呼んでいるらしいのですが、その違いはあまりはっきりしません。元はタイにも多く住んでいるいる中国の潮州系の人々が持ち込んだ中華料理で、台湾では「オアチェン」、香港では「ジンホーベン」、マレーシアやシンガポールでは「蠣煎(オーチェン)」と呼んでいます。東南アジアに移住した潮州系の人たちは多く、ここまで広がったのでしょう。しかしどうして、カキがたくさん採れる日本で、こんなにおいしいカキの食べ方をしないのか、不思議でなりません。作り方は前述のように簡単なので、ぜひご家庭で作ってみてください。僕は妻がカキアレルギーなので、最近はほとんど食べられないでいます。ハーッ!