タイ伝統古民家の中にある美術館

建物そのものに美術的価値がある―。それがタイのバンコクにある「ジム・トンプソンの家」です。対岸にあるバン・クルア地区と、古都アユタヤにあった6棟の民家を移築したもので、「バンコクでもっとも保存状態がよいタイ伝統家屋」とも言われています。一番古い家屋は1800年代にさかのぼるそうですが、高温多湿なタイの気候に合わせた高床式で、チーク材を使った優雅な建物です。屋根には涼やかな印象の透かし彫りが施してあり、光沢のある木の床は暑季でもひんやりしています。自身建築家であったトンプソンは、昔のタイの建築様式に忠実に復元したそうですが、生活に不便のないよう、電気をひいたり窓ガラスをつけたり、いくつか現代的なアレンジを加えています。

シルク王が選んだ古美術品の私設美術館「ジム・トンプソンの家」 シルク王が選んだ古美術品の私設美術館「ジム・トンプソンの家」

「東洋のベニス」とうたわれた水都バンコク

「ジム・トンプソンの家」は、バンコクの中心街サヤーム・スクエアから歩いていける距離にあります。ラーマ1世通りに面したソイ(路地)の奥にあるので、町の喧噪を逃れてひと休みするにもよい静かな場所です。なぜこんなに奥まった場所にあるかというと、実は現在の入り口が正面ではなく、敷地奥のクローン(運河)が玄関口だったからです。かつて「水の都」とよばれたバンコクは、19世紀後半まで道路もなく橋もない町でした。当時の交通手段は、網目のように張り巡らされた運河を行き交う船でした。昔のタイの風情を愛したトンプソンは、家を建てるにあたって水路に面した場所を選んだそうです。対岸のバン・クルアは、絹を織る職人たちが住んでいる地区で、シルクを扱う彼にとってなじみのある場所でもありました。

選び抜かれた古美術品の数々

トンプソンが集めた美術品は、東南アジアの彫刻や絵画、陶器など。「うつくしいものを集めたばかりでなく、完璧なセンスで配置されている」と、1958年に訪れた作家サマセット・モームに称賛されています。当時、東南アジアの美術品は西洋ではほとんど知られていなかったようですが、トンプソンは日曜日になると中華街に近いナコン・カセーム(通称「泥棒市場」)や、アユタヤを訪れ、気に入ったものを根気よく揃えていったようです。コレクションのうち、19世紀初めのジャータカ(仏教説話)絵画や、ビルマの彫刻、6世紀ごろのタイのドヴァーラヴァティ仏の像などが古美術の逸品として有名です。

館内は無料ツアーで見学

「ジム・トンプソンの家」は入館料はかかりますが、中を日本語や英語などで説明が聞ける無料のツアーで見学できます。言語グループごとに出発時間が違うので、受付で参加を申し込んで、次の出発まで待ちます。待つ間に、広い庭や、「ジム・トンプソンの」のシルク製品の売店などを見るのもよいでしょう。ツアーでは建物の構造や建材・建築様式、収蔵の美術品について説明があります。日本語可能なタイ人ガイドが案内してくれますが、火曜日午前中には日本人ボランティアがガイドしてくれるそうですので、おすすめです。
Jim Thompson House & Museum [住所]6 Soi Kasemsan 2, Rama 1 Rd., Bangkok(BTS 国立競技場(National Stadium)駅下車、1番出口から徒歩 [開館時間]毎日9:00〜17:00 入館料 100バーツ(約370円)