自分を表現する力

海外に行くと表現力が試されます。まず言葉が通じないわけですから、言葉が通じない中でいかに相手とコミュニケーションをとるかです。多くの国では、コミュニケーションをとれなくても、生活できるように仕組みが整っています。カフェやレストランでは値段表があるので、それを見ればわかりますし、多言語化されている場合も最近は多いです。旅行世界の共通言語は英語です。貿易でもそう。ですからひととおり義務教育で英語教育を受けた日本人は、世界のどこでだって通用してもおかしくはないのです。ところが日本の文化には「言わなくてもわかる力」を養成するような傾向も感じます。「察する」文化ですね。思いやりの文化である一方、相手に察してもらいたいと思ってしまう点もあります。ですから海外で、まずは英語が通じないことにびっくりしてしまうのです。言わなくてもわかってくれるはずの相手が、きちんと表現できないと、わかってくれないのですから。

バンコクのマンゴー屋さんで。こんな屋台でも英語で通じる バンコクのマンゴー屋さんで。こんな屋台でも英語で通じる

正しい英語とは限らない。相通は相手の英語力に合わせる

モロッコのタンジェに行ったときのこと、ハワイで暮らす日本人女性のAさんとカフェで知り合いました。もちろん英語はペラペラです。とても丁寧な英語で、ボーイさんにコーヒーを注文しました。ところがボーイさんはキョトンとしています。「カフェ ウイズアウト ミルクアンドシュガー」と言ったので、「ウイズアウト」で引っかかってしまったのです。「ウイズアウト」とは何かと、僕に聞いてきます。ウイズアウトは「without」のこと。ミルクと砂糖の入っていないコーヒーを頼んだのです。Aさんの英語は正しい。しかし通じないことにパニックになった彼女は、うまく説明できなくなってしまいました。僕はボーイさんにこう言いました。「カフェ、ノーシュガー、ノーミルク」。ボーイさんの表情は突然晴れて、深くうなずき厨房へと行きました。通じているかどうなのか、これを見極めなくては、正しい英語ができてもコミュニケーションはとれません。

世界の多くの人たちが、英語は外国語。難しく考える必要はない

英語を母国語とする人たち以外の人々は、ブロークンイングリッシュなこともままあります。それでも、世界の国と国が近くなり、人々が交わるようになり、コミュケーションツールとして、英語が利用されるようになった結果、たとえば写真にあるようなバンコクの屋台でも、英語が通じるようになっているのです。ただ通じるといっても、面倒な話までは無理。それでも通じると通じないとでは大違いです。ましてやタイ語は読み書きが難しく、タイ語表記されていたら、外国人はまずお手上げです。しかしこの国は、30年以上前から外国人旅行者誘致に熱心で、その成果として、屋台のおばちゃんでも、外国人相手の商売をする人は、英語が話せるようになっているのです。わかり合うために英語をツールとして使用するのです。目的は正しい英語を話すことより、相手とコミュニケーションをとることです。海外旅行は、人との出会いが何より楽しいのですから。