チェンマイで見つけた生きる充実感とは?

その奇妙な建物は、チェンマイ大学のすぐ隣にありました。楕円形をした土の壁でできており、小さな窓がいくつかついています。屋根はワラぶきです。タイではもちろん見たことがありません。ここが人気のカフェ『ディンディー(DinDee)』です。経営するのは日本人のOさん。在タイ18年になる女性です。以前は日本でOLをしていたのですが、ストレスで疲れきってしまいました。いったい自分が何をしているのか、もっと違う自分があるのではと考えた彼女が選んだ新しい仕事は、チェンマイにあるエイズ孤児たちの施設でボランティアをすることでした。「誰かと関わり、誰かのためになれるんですもの。私自身が生まれ変わった気がしました。日本でOLをやっていた頃には、決して味わえなかった充実感です」。働いているうちに、日本人、タイ人を問わず、多くの友達もできます。そんな彼女に、ひょんなことで与えられたのが、この土の家だったのです。

土でできたカフェDinDeeの外観はこんな風 土でできたカフェDinDeeの外観はこんな風

土の家はどうしてできたのか?

土の家は、アメリカのニューメキシコ州で先住民たちが暮らした家を模したものです。その土地にある素材を使って、気候に合った家を作るという考え方……アドビスタイルを取り入れたものでした。これを現地で学んだタイ人のジョン・ジャイダンさんが、エコロジーの考えに基づいて作ったものです。しかしエコはこの住居だけに限りません。ライフスタイルまでに及んでいきます。大地の恵みとともに生きること。Oさんは、人間関係も同じではないかと思ったと言います。国籍、年齢、性別、地位にも関係なく人と人が分かち合って生きること。そのために、人と人が出合い、交われる空間を提供するのです。それがDinDeeのコンセプトになりました。Oさんは友人たちと手作りで設備や内装を手がけ、2007年、カフェはオープンにこぎつけました。

土の家の中は、ひんやりとして気持ちいい 土の家の中は、ひんやりとして気持ちいい

いつもいろいろなお客さんたちでにぎわっている

ニューメキシコ州発祥の建築方法だけに、暑い時期のチェンマイでも、建物の中はひんやりと涼しげです。欧米人旅行者が静かに本を読んでいるその横で、たまたま居合わせた人同士が旅の話で盛り上がったりしています。白いブラウスに黒いスカートという制服を着たチェンマイ大学の女子学生たちも、授業後に集まっておしゃべりしていきます。手伝っているのは、エイズ孤児院を卒院した山岳少数民族の女性たち。縁のあった人たちと、喜びも悲しみも仕事も分かち合うことで、人生が豊かなになったとOさんは言います。DinDeeとはタイ語で土の家。ぜひ一度ランチに、お茶にと、訪ねてみてください。実はこのお店とOさん、拙著『サバーイ・サバーイ 在チェンマイ日本総領事館』(講談社)にモデルとして登場しています。こちらも併せてよろしくお願いします!