「1月1日生まれ」が多い訳

前編からのつづきです。以前、タイ北部にある、モンの子どものための学生寮に出かけたことがあります。自宅が学校から10km以上も離れているので、子どもたちは学校のある時期は寮で共同生活を送ってそこから通学し、休みに入ると村に戻ります。そこにいる子どもたちには、ずいぶん1月1日生まれが多いことに気がつきました。親が出生届を出しておらず、それぞれの誕生日を祝う習慣も特にないので、およその年齢はわかるが正確な生年月日がわからない子たちは、便宜上1月1日生まれとして入寮の書類を書いた、ということでした。伝統的には焼畑をしながら移動する暮らしでしたから、山地民のなかには国籍もない人もいます。伝統的な山の生活を捨て去れないために子どもが教育を受けられなかったりするなど、さまざまな問題も抱えているのです。 

綺麗な民族衣装のモン族 タイの山岳少数民族のくらし(後篇) 綺麗な民族衣装のモン族 タイの山岳少数民族のくらし(後篇)

タイの少数民族問題

タイの民族構成の、およそ85%以上をタイ族が占めています。しかし、戦乱や災害などで国境を接したミャンマー、中国、ラオスなどから移り住んできた少数民族の人びとも住んでいます。若い世代の多くは仕事を求めて山を下り、平地の都市生活になじんでいますが、生活習慣の違いやことばの問題などで周りとうまくいかないこともあり、少数民族の人びとの権利を守るため、タイはもちろん、ヨーロッパや日本のNGOなどが支援をしています。そのプロジェクトの一環として、刺繍上手のモンの女性たちが作った手工芸品を直接買い取ることで現金収入を増やし、子どもの教育費や、保健衛生など村の生活向上に役立てる取り組みをしている団体もあるのです。

少数民族の村を訪ねる旅

チェンマイのナイトマーケットなどで、きれいな刺繍のポーチなどを見かけることもあると思います。作り手はどんな人たちなのか、もしくらしぶりを知りたければ、山地民の村を訪ねるツアーを主催している旅行会社もあります。参加すると、タイ中央部にあるバンコクとは異質な、山がちな国境周辺の自然環境や、仏教に精霊信仰が加わった独特な宗教観、農業による素朴な村のくらしを知るよい機会になると思いますよ。