- 岡崎大五
- 風来坊のような旅人が、30歳で帰国。海外専門の添乗員を経て作家になりました。角川文庫の添乗員シリーズは累計30万部を超えるベストセラーに。今ではミステリー小説やエッセイなども書いていますが、旅は止められません!訪問国は83か国です。ブログ「岡崎大五の作家生活」を運営中。
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「アッサラーム・アレイクム」は、世界最強の挨拶か?
海外に行ったら、挨拶だけでも現地の言葉でするように心がけています。すると緊張がほぐれて、相手もニコッと笑ってくれたり、うれしいものです。値段交渉の時でも、挨拶を入れると、ひと呼吸入った感じで場がほぐされます。なんとなくですが、相手の表情が少し和らぎ、外国人から多く取ってやろうという気持ちにセーブがかかり、わりと低めの額から交渉が始まるように思えます。日本人でも片言で、「こんにちは」と言ってもらえると、とたんに和みますよね。「ニーハオ」(中国語)、「サワディー」(タイ語)、「ナマステ―」(ヒンディー語)、「メルハバ」(トルコ語)、「ジャンボ」(スワヒリ語)…いずれも「こんにちは」の意味ですが、響きが面白いですよね。
さて、僕と妻が、中央アジアにある国、ウズベキスタンからトルクメニスタンに向かう時、途中に2キロもの緩衝地帯がありました。2カ国どちらとも言えないようなところなのでしょう。そこには大型トラックが数珠つなぎになっています。僕たちは徒歩ですので、歩いて行けばいいのですが、持っていたミネラルウォーターを飲み干してしまって、喉がカラカラでした。あたりは砂漠に近く、一本の木も生えていません。灼熱の太陽の光が降り注いでいます。7月の中央アジアは、普通に40度を超える猛暑というか熱暑の日々です。「あれ、見てよ」。妻が僕を小突き、僕はトラックの荷台で出来た、わずかな日陰にしゃがみ込む運転手を見つけました。そこには、なんと大きなお盆に楕円形をした真っ赤なスイカが切られて、置かれているではありませんか。僕も妻もゴクリと喉が鳴りました。
トラックは「TR」とトルコのナンバープレートです。「メルハバ!」とトルコ語で明るく声を掛けると、運転手も「メルハバ!」。一気にムードがやわらぎます。続いて僕は、イスラム教徒の挨拶を繰り出しました。「アッサラーム・アレイクム」。これは、世界中のイスラム教徒に通じる挨拶で、「あなたの頭の上に平安を」という意味です。いい意味じゃないですか。運転手はリズムに合わせるように、掛け合いの決まり文句を言います。「アレイクム・アッサラーム」。単語の順序を逆さまにして、「あなたの頭の上にも平安を」という意味になります。互いにエールを送るような挨拶ですね。
相手は「ホホーッ!」といった態度を示してくれます。イスラム教を尊重していることになるのかもしれません。そうして僕と妻は、何気にスイカを見つめます。「どうです、おひとつ」。運転手は、たぶんこんな意味のトルコ語を話し、右手でスイカをすすめてくれたのです。こうして僕たちは、スイカにかぶりつきました。抜群のうまさです。そしてお礼の言葉もトルコ語で「テシュクレデレム(ありがとう」。挨拶だけでも、気持ちって、通じるものですね。
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