- 岩佐 史絵
- 東京都在住のトラベルライター。雑誌、旅行業界誌、新聞、ウェブなどさまざまな媒体に新しい旅スタイルを提案。充実した時間を過ごすことができるのが”ラグジュアリー”だと考えています。旅をしたおかげでQOL(人生の質)が上がった!そんなふうに思えるような、心に潤いを添える旅のアイデアをお届けします。
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車窓をながめていると本当にたくさんの教会を目にする。ベトナムでも最もキリスト教信者が多いエリアだ
かつて「インドシナ」と呼ばれ、フランスに統治されていたベトナム。しかしフランス統治が始まるずっと前から、ベトナムにはカソリックがもたらされていました。
ベトナム北部、ハノイから車で2時間ほどのニンビン省にあるファッジェム教会はベトナムで最大のカソリック教会。1875年から24年もの年月をかけて建設されました。南部と違い冬場は寒くなる北部では貧しい農村も多く、教会は西洋の医療や教育を施す重要な場所となり、普及していったのです。車で走っていても、この周辺にはキリスト教会がとても多いのがわかります。
おそらくヨーロッパの本物のキリスト教建築を見たことがない人々がデザインした大聖堂
そんな土地柄ゆえ、ベトナム人たちの手によって立派な教会を建設しようという機運が高まったのでしょう。ファッジェム教会は設計から建設まですべてベトナム人の手によって作られたのだといいます。千年にもわたり中国に支配されていたベトナムゆえ、その建築方式は中国のテイストもあり、正面に池が配置されているのは風水の考えによるものだそう。池の中ほどには両手を広げたキリスト像が置かれています。訪れる者すべてを受け入れ包み込むようです。
木造建築ならではの温かみは万国共通。柱に巨木が使われているところがアジアらしい
石造りの鐘楼を抜けて“本堂”へ。こちらは木造で、細かな彫刻などすべてが木彫りです。ヨーロッパの大聖堂で見るような講壇もすべて木造。内部は自然光のみで照らされているせいか、えもいわれぬ雰囲気が漂っていて、エアコンもないのにとても涼しいのが印象的です。ヨーロッパの教会も天井が高いのですが、ベトナムの場合はこの天井の高さのおかげで熱気を逃がす効果もあったのでしょう。
どこかにアオザイ姿のマリアが描かれているというが、筆者は見つけられず……
祭壇に寄ってみると、カソリック教会らしくきらびやかに装飾されていました。もちろん、建設当時から何度となく改修されてきていますが、赤く塗るあたりはやはり中国テイストなのかも。また、描かれている聖人の姿をよく見るとこちらもアジアンないでたちの人が混ざっている……。ガイドさんによると、描かれているのは聖人だけでなく殉教者だとのこと。つまり、ベトナムでもかつてキリスト教は迫害された歴史がありますから、ベトナム人の殉教者を描いたものなのかもしれません。
右奥に見えているのが「ルルドの山」。大聖堂の建設されたころに起こったルルドの軌跡を表現
この大聖堂の周囲にはほかにも石造りや木造のいくつもの礼拝堂があります。また、聖マリアが出現したという伝説の「ルルドの山」やキリストが処刑された「ゴルゴダの丘」などを模した小山など見どころはさまざま。同じくニンビンにある世界遺産のチャンアンを訪れたついでに立ち寄ることが多い教会ですが、じっくりと時間をかけて見学するのがおすすめです。
現地受付でガイドを手配することもできますが、日本語ガイドはありませんので、ガイドが必要な場合はハノイから同行してもらうといいかもしれません。
※記事は掲載日時点での情報であり変更されている可能性もあります。ご了承下さい。(掲載日:2020/10/06)
※旅行前には必ず、外務省の海外安全ホームページで訪問地の安全情報についてご確認ください。
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