グルメ垂涎の的「ツバメの巣」は高級漢方食材

広東料理の高級食材のひとつに数えられる「ツバメの巣」。あなたは食べたことがありますか? 普通はそうたびたび口にするチャンスがない食材ですよね。これはアナツバメという種類のツバメが作る巣のことです。アナツバメは東南アジアに多く生息している鳥であり、洞窟内に巣を作ります。その巣の材料は、日本で巣作りをするツバメの仲間とはまるでちがいます。唾液腺から出る分泌物でできているのです。古来から美容と健康にいい漢方食材として珍重され、スープやデザートに用いられてきました。巣そのものにはほとんど味はなく、歯ざわりを楽しみます。

ボルネオ島、コタキナバル近郊で見た「ツバメの巣」ビジネスとは? ボルネオ島、コタキナバル近郊で見た「ツバメの巣」ビジネスとは?

産地の東南アジアでは事故が後を絶たず……

ツバメの巣を採取するのはとても困難な作業です。中華圏で非常に人気が高く、高値で取引されるため、産地となる東南アジアでは現地の人々が命の危険を冒して作業をしています。アナツバメが営巣地とするのは洞窟(“アナ”という名前の由来)の中です。暗く滑りやすい上に、洞窟の壁は絶壁となっており、転落の危険と隣り合わせなのです。

こんな方法でツバメを巣を取るとは!

ボルネオ島北部、マレーシアのサバ州で不思議なものを見ました。ガイドさんが、道路から少し入った茂みの中に建つ建物を指差し、「あれはなんだと思いますか?」と聞いてきます。なんの変哲もない、コンクリートでできた3階建てのマンションのような……でも人が住んでいる気配はありません。「あれは、“ツバメの巣の巣”マンションですよ!」あの建物の中にアナツバメを呼び込み、中で巣を作るように仕向けて、簡単に巣を採取できるようにした新しいビジネスだったのです。これには驚きました。

アナツバメに巣作りをさせるための努力の結晶!

その光景があまりに印象的だったので帰国後に調べてみると、あの建物は、外観は無粋そのものですが、実はハイテクを駆使した技術の塊でした。アナツバメの好む室温と湿度を保ち、アナツバメが安心して入ってくるように鳴き声を録音して拡声器で流し、出入り口の向きを工夫し、害虫や害獣を駆除し、盗難防止のため防犯カメラを設置し……。建物さえ準備すればあとは勝手に巣をかけてくれるわけではなく、さまざまな努力の上に成り立っていた農業ビジネスでした。

農業ビジネスの未来形がここに

昔はツバメが子育てをしている最中でも巣を取ってしまい、ツバメが減ってしまったことがありましたが、現在はヒナが巣立ち役目を終えたあとの巣だけを取る採集方法に変わっています。ツバメを決して“家畜化”するわけではなく、ただ使い終わった巣だけをもらう―。ツバメの巣ビジネスは、農業ビジネスの形態としてとても興味深い性質のものだと思いませんか? 私はあの無骨な“ツバメの巣の巣”に、人間の食への追求心と未来の農業の姿を見た気がしました。この人工のツバメの巣は、マレーシアのサバ州やサラワク州に普及しているようです。道路沿いのマンション風の建物に、注目してみてくださいね。