ボルネオ島唯一の鉄道路線とは

「あっ、サバ鉄道です! 走ってます、走ってます!」ガイドさんは、運転している車のハンドルから両手を離す勢いで、私に教えてくれました。マレーシア、ボルネオ島西北部の都市コタキナバルから近郊へ向かうツアーの途中のことです。世界の鉄道にそんなに詳しくない私の目には、ごくふつうの鉄道にしか見えませんでしたが、ガイドさんはとても誇らしげ。あとでよく聞いてみると、サバ鉄道というのは正式名称を「サバ州立鉄道」といい、ボルネオ島で唯一の鉄道路線だそうです。「次回の旅行では、ぜひ乗ってみてください!」

緑あふれる車窓が楽しめる、サバ州立鉄道 緑あふれる車窓が楽しめる、サバ州立鉄道

日本軍に壊されてしまったという路線ですが……

サバ州立鉄道の歴史は古く、1896年に開業しました。当時、イギリス領だったこの地で、イギリス北ボルネオ会社が農作物を運搬する目的で線路を敷いたのです。その後路線は徐々に伸びていきましたが、第二次世界大戦末期の1944年、上陸した日本軍により壊滅的に破壊されてしまいます。戦後、復旧工事を経て、サバ州の管理のもと再び鉄道が走るようになりました。

快適な乗車体験をしたければこちら!

この鉄道のユニークなところは、鉄道路線の一部分で観光列車を運行していることです。リゾート会社「ステラハーバーグループ」の運営している「北ボルネオ鉄道」というツアーがそれです。北ボルネオ鉄道という鉄道路線があるわけではないので、お間違えなく! 毎週水・木曜日に運行する観光専用の蒸気機関車で、始発のタンジュン・アルー駅を出発してから途中下車を2回し、お寺や市場を訪ね歩き、車内でランチをとりながら、またタンジュン・アルー駅に戻ってくるという、約4時間の旅程。口コミを見ると、車窓からの緑豊かな風景が評判を得ているようです。

ローカルさを満喫したければこちら……!

しかし、観光用ではない普通のサバ州立鉄道は、北ボルネオ鉄道とは大違いの、生活感あふれるローカル線。ボロボロなディーゼルカーが引っ張る客車は、地元の人たちをいっぱいに乗せてジャングルの中を走ります。トイレは便器からダイレクトに線路上に落ちていくスタイル。冷房なしの直角シートの客車には、車内販売のおばさんも乗り込んできます。客車は1両だけなので、貨物車にも乗客が入ります。バイクごと乗ってくるお客さんもいるそうですよ。快適な鉄道旅行をしたければ北ボルネオ鉄道、よりディープな乗車体験を望むなら在来線で。いっそ両方を乗り比べてみるのも、おもしろいかもしれませんね。ただし、在来線の方は本数がきわめて少ないため、旅程に余裕を持って臨みましょう!