幼児の顔にどうみても不自然な「ほくろ」が!

インドでは幼児の頬・額・あごなどに、不自然なまでに大きな「ほくろ」がわざと描かれていることがあります。筆者もインドに通い始めた頃は、これが何を意味するのか全くわからなかったのですが、実はこれ「邪視よけ」なのです。インドでは、人々の嫉妬のこもった視線が病気や不幸をもたらすと考えられています。邪視は特に乳幼児が影響を受けやすいため、妬みをかわないようにわざと大きなほくろを描いて、美形ではないとアピールし、嫉妬のまなざしを避けるのです。

インドの幼児にわざと「ほくろ」を描くその理由は? インドの幼児にわざと「ほくろ」を描くその理由は?

インド以外にもある「邪視よけ」

実はこの邪視という考えは、インドだけでなくヨーロッパや中東でも共通してみられます。ヨーロッパでも邪視信仰が強いのは地中海沿岸地域で、伝統的に邪視を避けるために船の舳先に大きな目が描かれます。中東でも、青い円の内側に黒い円の描かれた円盤や、手のひらに目玉をあしらった「ファーティマの目」と呼ばれるものが邪視を避ける護符として用いられています。

インドの街中にあふれる「邪視よけ」グッズ

筆者が住んでいたインドのチェンナイでも、探してみると「邪視よけ」に関連したモノがたくさんありました。たとえば、家の軒先や玄関に飾られる鬼のお面や置物。赤や青のどぎつい色をして、角と牙を生やした鬼が、ヒゲの生えた口からペロリと舌を出しているのです。お面ではなく、この鬼の絵を家の壁に描いたり、瓜に描いたものを家の門に置いて邪視を避けることもあります。それ以外にも、ライム・唐辛子・貝殻などをヒモに通したものを店の軒先にぶら下げたりもしています。また、他人からの妬みを買いやすい家や建物などの新築の際には、土製の壷をひっくり返してかぶせた案山子のようなモノを工事現場にぶら下げて、邪視を受けないようにしています。インド西部のグジャラート州でも「邪視よけ」の信仰がありますが、妬みを受けやすい幼児や新婚の花嫁などの衣装は邪視をはね返すと言われるミラーワーク刺繍で作ります。同じインドでも地域による違いが見られておもしろいですね。