世界各国にある様々な宗教的朗唱

私たち日本人は、神社やお寺などに行くと何だか神妙な、不思議と心が落ち着くような気持ちになりますよね。異国の地でキリスト教の教会やイスラーム教のモスク、ユダヤ教のシナゴーグといった、その国独自の宗教建築物が持つ独特の静謐な空気を感じるのも、旅の魅力の一つです。筆者は仏教の声明や神社で唱えられる祝詞、イスラーム教のアザーンのように、宗教に関係する朗唱を聞くのが大好きなので、今回はヒンドゥー教のヴェーダについて紹介したいと思います。

世界無形文化遺産 古のヴェーダの響き 世界無形文化遺産 古のヴェーダの響き

口伝で伝えられる「知識」の集大成「ヴェーダ」

インドには様々な宗教が混在していますが、人口の7割ほどを占めるのはヒンドゥー教徒です。ヒンドゥー教では、家庭から街中の寺院に至るまで頻繁に儀礼が行われ、様々な宗教的朗唱を聞くことができます。日々の儀礼で唱えられるマントラ(真言)の多くも、その起源がヴェーダにまで遡ると言われています。ヴェーダは紀元前1500年ごろにインド亜大陸に侵入したアーリヤ人の民族宗教「バラモン教」の聖典です。バラモン教は後に非アーリヤ的な土着の宗教と習合を重ね、シヴァやヴィシュヌなどを最高神とするヒンドゥー教へと変化しました。ヴェーダという言葉は、サンスクリット語の「知る」という言葉から派生し、宗教的「知識」を意味します。成立以来長きにわたり口伝によって継承され、文字によって書き記されるようになったのは後世になってから。口伝でも驚くほどの正確さで、21世紀の今に至るまで伝承されています。

めらめらと燃え上る炎とヴェーダの響き

日本の仏教儀礼「護摩(ごま)」のオリジンであるともいわれるホーマという儀礼などでも、ヴェーダの響きを聞くことができます。レンガなどを積み上げて作ったかまどの周りに儀礼を司るバラモンが座り、ヴェーダを唱えながらめらめらと燃え上る炎の中に供物を次々と投げ入れていきます。もくもくと上がる煙とバラモンたちがひたすら唱えるヴェーダの響きに、どこか遠くへ連れて行かれるような感覚に陥るかもしれません。ホーマはヒンドゥー寺院や時には家庭で行われることもあります。現地で仲良くなった人に「ホーマを観てみたい!」とリクエストしてみると、連れて行ってくれるかもしれません。二千年以上の時を越えて、唱え続けられて来た古のヴェーダの響きを是非とも聴いてみてください。