ラテン文字やアラビア文字だけじゃない

世界にはさまざまな文字があります。その数は現在使われているもので、大きく分けて30近くあるそうですが、なかでもアジアは文字の宝庫と言ってもいいぐらい種類が豊富。縦書きのモンゴル文字や、視力検査表の丸を思わせるビルマ文字、世界唯一の生きた象形文字であるトンパ文字など、ユニークな形をした文字がいっぱいです。私が旅をするなかでとくに文字を面白いなと思ったのが、南インドとその周辺国でした。あまり広くないエリアを移動するたびごとに、ユーモラスな形の文字に出合うことになったからです。今回はそんな、南アジアの文字についてご紹介します。

タミル文字 タミル文字

州を越えると文字が変わる南インド

インドには多数の文字と言語があることで有名です。通貨ルピーのお札の裏を見ると、10種類の文字を用い、15の公用語で金額が記されています。その文字の豊かさを実感したのが南インドでした。タミルナードゥ州に着き、新体操選手が操るリボンのようにぐるぐるしたタミル文字に新鮮な感動を覚えたあと、隣のケララ州に行くとまた少し異なるマラヤーラム文字を使っているのです。ほかにもカンナダ文字、テルグー文字と、南インドの4州全部が異なる文字を使っているのが面白く、私はこのときから文字に注目して旅行するようになりました。

マラヤーラム文字 マラヤーラム文字

スリランカのカエル文字

南インドの次に訪れたのが、海を隔てた島国スリランカ。シンハラ語とタミル語を公用語とする国で、シンハラ語の表記にはシンハラ文字が使われます。この文字の愛らしさに、私はすっかり魅せられてしまいました。なぜなら、一筆書きで描いたカエルの頭のような文字がたくさん混じっていたから。ときにはそのカエルがウインクしていたり、口をあけていたり、腕のようなものを横や下側に突き出していたり……。そしてよく見ると、なんとカタツムリのように見える文字もあるではありませんか。スリランカではカエルとカタツムリの多い看板を探すのが、私の旅の楽しみとなりました。

シンハラ語 シンハラ語

モルディブのサンゴ文字

スリランカから飛行機で約1時間30分のモルディブ。インド洋のまっただ中にある、サンゴ礁の島々からなる国です。首都マーレに着いたとき、私はまたびっくりしてしまいました。この国の言葉はディベヒ語ですが、それを表すターナ文字がまた面白かったからです。まるでカタカナの「メ」のような、ちょっと斜めになった文字が並ぶ様子は、なんだか漫画でイヌがくわえている骨を連想させました。もしくはモルディブらしく、サンゴのかけらのような文字といったほうがいいでしょうか。移動するたびに驚きがあった南アジア。またどこかでこんな、“文字に興奮する旅”をしたいものです。

ターナ文字 ターナ文字