- 鈴木幸子
- 旅行ジャーナリスト&エディター。出版社勤務、地球の歩き方編集等を経て独立後、海外の旅を中心に執筆。海外60か国以上を頻繁に取材し、幅広いメディア(旅行誌、婦人誌、朝日新聞社&時事通信社、WEB媒体)等で一期一会のハッピーな旅行記事を発信中。(有)らきカンパニー主催。「らき」はギリシャ・クレタ島の地酒です。
出発エリアをに変更しました。
プランタン・モレトゥス印刷博物館の中庭は16世紀の典型的なガーデンスタイル。
「ベルギーのアート旅」前編からの続きです。アントワープの世界遺産「プランタン・モレトゥス印刷博物館」も、アート好きにはおすすめのスポットです。博物館を紹介する前に、アントワープが16世紀ヨーロッパ最大の商港となった背景をおさらいします。大きな理由は、英国の毛織物輸出の独占団体がアントワープを指定市場とし、英国の毛織物はすべてこの港を通過することになったためです。当時の大切な貿易品である羊毛や南ドイツの銀や銅、東洋からの香辛料ほか、世界各地の特産品がこの港に集まり、アントワープは世界の商業・金融の拠点となりました。町の繁栄は文化発展を後押しし、出版や版画制作においても欧州の中心地となっていました。
アントワープ出身の画家ルーベンスはここで500冊の本を購入したという記録も残されています。
当時ヨーロッパでもっとも名高い印刷出版業者が、クリストフ・プランタン(1520〜1589)でした。工房は9世代にわたって続いたもので、創設者の邸宅と工房がそのまま博物館となっています。書物と写本3万、木版画1万5000、銅版画3000ほか、絵画やデッサンなど世界最大のコレクションで、中庭のある邸宅は2階建てで展示室は約35部屋! 建物の装飾やアート、調度品も含め、当時の富豪の暮らしぶりがわかります。
ミュージアムショップではこんなカードも購入できます。博物館のモチーフをうまく今風にアレンジしたデザインは、さすが芸術の街アントワープと実感させられます。
ここには当時の印刷機や活版なども残されており、木版と銅板の違い、14世紀以前は動物の革が印刷に使われていたこと、14世紀以降は紙は麻から作られていたことなども学びました。注目すべきは、4000以上もある貴重な植物装飾の木版。また、創業者一族と親交のあった画家ルーベンスやブリューゲルの作品などが展示されていて鑑賞できます。ブリューゲルとえいば、当時人気を博した彼の船の版画シリーズもここで出版されました。この版画に使われている彫刻凹版・エングレービングは最も古くから行われた銅版画技法であり、こちらの印刷工房、初期は版画用の彫刻道具を造っていたそうです。とにかく博物館内部は広くて見るべきものもたくさんありますから、時間に余裕をもって出掛けましょう。
●プランタン・モレトゥス印刷博物館 www.museumplantinmoretus.be
アントワープ中央駅はブリュッセルからわずか電車で40分ほど。昨年、キムタクの次女kokiが出演する某飲料水メーカー新商品のテレビCMで撮影場所に使われていましたね。
アントワープへ行くなら、世界いち美しい鉄道駅と絶賛される「アントワープ中央駅」は要チェックです。そして、19世紀の貴族の邸宅がそのまま美術館になった「マイヤー・ヴァン・デン・ベルグ美術館」。こちらには今年没後450年を迎えたピーテル・ブリューゲル1世の貴重な作品2点『悪女フリート』と『12の諺』に加え、その子孫による模写も展示されています。息子ピーテル・ブリューゲル2世が127枚も模写したうちの1枚『鳥罠のある冬景色』もあります。まだたくさんあるベルギーのアートスポット、何度訪ねてもまた行きたくなりますよ。
●マイヤー・ヴァン・デン・ベルグ美術館 https://www.museummayervandenbergh.be/en
●取材協力:ベルギー・フランダース政府観光局 www.hollandflanders.jp
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