ブリューゲルがひとりの画家ではないことを、ご存知ですか?

名画「バベルの塔」でも有名な16世紀ベルギー・フランドル派の画家ピーテル・ブリューゲル1世。2019年は彼の没後450年にあたり、ベルギー各地ではブリューゲルに関するさまざまなイベントが予定されています。そのいくつかと、ブリューゲルの故郷や愛した原風景、見るべき美術館を5回にわたってご紹介します。ブリューゲルファンなら、2018年に日本各地で開催された企画展覧会「ブリューゲル展〜画家一族150年の系譜」をご覧になった方も多いでしょう。筆者も6月の取材前に観に行きその世界に魅了されたひとりです。そしてブリューゲルという画家は1人でなく、父、子、孫、ひ孫の代までそのスタイルが受け継がれ、約150年にわたって「ブリューゲル様式」とよばれる'ブランド’が確立したことをはじめて知りました。

ピーテル・ブリューゲル1世が36歳の頃に描いた「反逆天使の転落」(1562年)の一部 ピーテル・ブリューゲル1世が36歳の頃に描いた「反逆天使の転落」(1562年)の一部

ブリューゲルが描いた農村を体感できる野外博物館

首都ブリュッセルの東約80キロにある商業都市ハッセルト郊外に、16世紀のブリューゲル絵画の世界を再現した野外博物館ボクレイク(Bokrijk)があります。ブリューゲルはとりわけ農村の情景や民衆を多く描き「農民画家」とも呼ばれました。創設者のジョセフ・ウェイン氏(Jozef Weyns)はブリューゲルの絵の中の建物やオブジェにインスパイアされ、研究を重ねてこの博物館を創立します。総面積約500ヘクタール(東京ドーム107個分)の広大な敷地には、森や湖、草原、田畑が広がり水車まであります。羊やヤギ、鴨なども飼われていて、ひとつの村のよう。ベルギーのフランダース地方(※)から約120軒の伝統家屋をここに移築し、昔の農村に限りなく近づけました。ブリューゲルの絵の風景のみならず、当時の農民の暮らしぶりがよくわかるよう工夫され展示されています。
※フランダース地方とはベルギー北部のオランダ語(フラマン語)を話す人々が住む地域のことをいいます。

1958年に開館したボクレイク博物館 1958年に開館したボクレイク博物館

3つの人気代表作品に合わせてARを使った楽しい展示も

とくに2019年4月6日から10月20日まで開催される特別展「ブリューゲルの世界」は見逃せません。ブリューゲルは庶民の収穫祭や婚礼の宴などを好んで描いています。とくに宴のための料理支度や調理器具、料理、器の描写はとてもリアル。宴に参加して飲み、食い、踊る人々の顔もそれぞれに特徴があり表情豊かで、細かなところまで演出がなされていてずっと見ていても飽きません。特別展期間中はウィーン美術史博物館所蔵の傑作品「謝肉祭と四旬節の喧嘩」「子どもの遊戯」「農民の婚礼」を取り上げ、そこに描かれた16世紀の農具や生活雑貨などをAR(拡張現実)を使って現在のものに置きかえ、わかりやすくレクチャーしてくれます。

「謝肉祭と四旬節の喧嘩」(1559年)の一部。園内のブリューゲルゆかりの建物をつなぐ散策ルートが設けられるそうです 「謝肉祭と四旬節の喧嘩」(1559年)の一部。園内のブリューゲルゆかりの建物をつなぐ散策ルートが設けられるそうです

農耕馬の馬車に揺られて絵の世界へタイムトリップ

特別展の期間中、夏期7月11日〜9月1日限定でブリューゲルの演劇パフォーマンスも予定。巨大な納屋を利用し実際に人が絵画の中を歩けるようなインスタレーションや、当時の食事の作り方やレシピがわかるような展示、ブリューゲルの絵からわかる「命のサイクル」の映像など、音と最新技術を駆使した貴重な体験型企画展となっています。行かれる方は、ぜひ農耕馬フラミッシュホースの馬車に乗って館内を回ってみてください。美しい森や田園風景の中、蹄の音を聞きながら揺られていると、本当に絵画の中に入り込んでしまったかのような気分になります。ブリューゲル初心者でも魅了されること間違いなしです。「2019年はブリューゲル没後450年」(2)へ続きます。
協力:ベルギー・フランダース政府観光局 www.hollandflanders.jp
ボクレイク野外博物館  www.bokrijk.be
ブリューゲルの世界 (英語) www.dewereldvanbruegel.be/en/

ブリューゲルの絵の中で描かれる竹馬に似た遊具は、子どもたちにも人気です ブリューゲルの絵の中で描かれる竹馬に似た遊具は、子どもたちにも人気です