内戦は遠い国の話と思っているのは日本人だけではない『ビューティフル・ピープル』

ボスニア紛争を知るおすすめ映画の後編です。1999年のイギリス映画の『ビューティフル・ピープル』は、サラエボも出てきますが、舞台の多くはロンドン。そのロンドンでいきなりセルビア人とクロアチア人の難民がケンカを始めるところからスタートします。内戦は、双方に難民を生みますが、逃れた先でも争う愚かさ。全体的には軽いタッチのオムニバスですが、あるエピソードでイギリス人女性が難民の男性と恋仲になり家族に紹介しようと家に連れて行くと、その男性が内戦で女子供を殺したことを告白するというシーンを今でも覚えています。ロンドンに暮らし、内戦が他人事と思っている人たちの間に、いきなり内戦の残酷さが突きつけられたシーンでした。

現在のサラエボの町。周囲を小高い丘に囲まれた盆地にある 現在のサラエボの町。周囲を小高い丘に囲まれた盆地にある

女性監督が描く『サラエボの花』と『サラエボ、希望の街角』

内戦が終わっても、心の傷はなかなか癒えることはありません。ボスニアの女性監督ヤスミラ・ジュバニッチによる2006年の『サラエボの花』は、サラエボで生きる母子家庭の母娘の物語です。父親を知らない娘が、その出生を母に問いつめて行くと、そこに残酷な事実が…。しかし、それを乗り越えて生きて行こうとする愛情の話です。同監督が2010年に撮った『サラエボ、希望の街角』は、サラエボに暮らすカップルが、過去の傷を乗り越えて生きるために、ふたりの方向が離れて行ってしまうという話。共に“女性視点”というところに、「戦争は威勢の無責任な男にそそのかされて始まり、女性や子供は常にその被害者になる」と感じました。題材が題材だけに、明るい話ではありませんが、サラエボへの理解を深めるためには、すべておすすめの映画です。

ジェノサイドの指導者を追う映画『カルラのリスト』と『ハンティング・パーティ』

場所はサラエボではありませんが、ボスニア紛争で最大のジェノサイドが、「スレブレニツァの虐殺」でした。セルビア人勢力により、町に避難したボシュニャク人(イスラム教徒)男性8000人が殺された事件ですが、それを指揮したのがカラジッチです。戦後、彼は旧ユーゴスラビア戦犯法廷(ICTY)に呼び出されましたが逃走しました。その彼を追うICTYの女性検事カルラ・デル・ポンテを追ったドキュメンタリーが、2006年の『カルラのリスト』です。また、カラジッチ(をモデルにした戦犯)を追うジャーナリストを主人公にしたハリウッド映画が2007年の『ハンティング・パーティ』。前者は淡々と進むドキュメンタリーなので、苦手と言う人は娯楽映画になっている後者が見やすいでしょう。ジャーナリスト役はリチャード・ギア(笑)。別名になっていますが、戦犯のフォックスの外観はカラジッチそのものです。カラジッチは2008年に逮捕されて、現在も裁判中です。